2015年12月2日水曜日

夢幻諸島から クリストファー・プリースト

新☆ハヤカワ・SF・シリーズ、2013/8/9

http://www.amazon.co.jp/dp/4153350117

 舞台となる惑星には、内陸国家が群雄割拠している大きな北大陸(ノードマイアー)と、大部分が極冠で占められる小さな南大陸(スドマイアー)があり、2つの大陸の間には惑星表面の70%以上の面積を占める「ミッドウェー海」が惑星を一周している。

 この惑星唯一の大洋には「夢幻諸島」(ドリーム・アーキペラゴ)が点在しており、比較的狭い2つの海峡があり、暖流の北ファイアンド吹走流(ドリフト)と寒流の南振動流が惑星全体を取り巻く”コンベアー・ベルト”の一部を構成している。

「夢幻諸島」全体の地図はまだ存在していない。なぜなら、この惑星では空中撮影による地図作成は時間勾配によって生じる歪みのせいで不可能であり、極端に低い高度から観測した局所的な地図を繋げていくしかないからだ。これは赤道を周回している2つの大きな「時間の渦」が、磁極付近を除き一日2回、視覚の歪曲と時間の歪曲を引き起こすことによる。

 夢幻諸島では島ごとの地図はあっても夢幻諸島全体の地図/海図は存在しないように、本書ではそれぞれの島の出来事の物語は個々に綴られているが、その全体を流れる繋がりは一読しただけでは分からない。それぞれのエピソードに登場する人物を繋ぎ合わせることによって、それぞれの人生と人間関係が初めて浮かび上がってくる。

 なかでも冤罪事件を巡る作家チェスター・カムストン(本書の編者でもある)と女性社会活動家のカウラーと女性新聞記者のダント・ウィラーの3人に注目!

(部内留保)

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