2015年12月2日水曜日

水族 星野智幸

岩波書店 2009年

 海面が上昇した世界。東京電波塔の展望台から北側を見ると、都心の平野部が巨大なすり鉢の底にあるのが見え、南側を見ると高さ500mを越すコンクリート壁が東西に連なって視界を遮っている。眼下には凶暴なほどの緑が繁茂しているが、実はあらゆる建造物の屋上に植林が義務付けられたものだ。
 代々木動物園には霊長類館があるが、この世界ではなぜか水棲哺乳類を霊長類と呼んでいる。高校を卒業した主人公は、水中に置かれたアクリル板でできた四角い部屋で住み込みの夜警の仕事に就く。これは人類が水底で暮らすためのデータを取るためでもある。

(横浜研開架)


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