2016年1月3日日曜日

わが名はレジオン ロジャー・ゼラズニイ

サンリオSF文庫 1976年

 主人公アルバート・シュヴァイツァー、またの名ジェームズ・マディソン、またの名ジョン・ダンは、かつて世界中央データ・バンク計画にシニア・プログラマーとして参画、全体運営の老責任者ジョン・コルゲートのアドバイザーにまで昇進したが、この計画がもたらす未来に疑念を持ち、自分のデータをすべて消去する道を選らんだ。私設調査機関(世界で2~3番目に大きい探偵情報局)のドン・ウォルシュからの依頼で危険かつ秘密の仕事を請け負っている。
 「レジオン」の意味は最後まで出てこないが、主人公の本名かもしれない。

 ・第一部 <ルモコ>前夜
 西インド諸島とベネズエラの間にある小アンティル諸島の洋上に浮かぶ基地”アキナ”。そこから海底約数千キロに延びた縦坑(ちょっとそれじゃ地球中心に届いてしまう。数千mの間違いか。)ハイウェイが掘られている。海洋性地殻を貫いてマントルに達し、火山噴火を起こして新しい海洋島を造るもので、<ルモコ>計画と名付けられている。

 この計画の前身として「モホール計画」の名前が出てくるが、なんと本書では1957年、AMSOC(アメリカ雑学協会)のウォルター・ムンク博士とハリー・ヘス博士が提唱し(ここまでは本当)、ボーリングと円錐核爆弾で天然ガスを掘り起こす計画として紹介されている(本当にそうだったかも)。
 カリブ海のドーム都市ニューエデン(水深175ファゾム、人口十万人以上)、北アメリカ大陸棚沖のドーム都市ニュー・サレムが登場。

 ・第二部 クウェルクェッククータイルクェック
 バハマ諸島最大のアンドロス島沖合いにある人工島”ステーション・ワン”が舞台。幅約700フィートの固定基盤上に、ベルトレ-ン加工会社のウラン抽出工場、研究所、図書館、美術館、診療所、住宅、レクリエーション施設がある。周りは音響壁に囲まれた海底公園がある。そこでスキューバ・ダイバー2人がイルカに殺される。

 二人の体にはゴンドーイルカの歯形が。”イルカ・ソサイエティ友の会”元会長リディア・バーンズが出資するイルカ研究協会は、イルカは下顎で突き殺すことはできても噛み殺すことはできないと反論するが黙殺される・・・。

 アンドロス島に住むマーサ・ミレイはイルカなどの写真家として有名で、広島で被爆した母から生まれ下半身に障害を持つ。このマーサと主人公の間で議論される、まったく精神構造の異なるイルカとの意思伝達の問題が興味深い。ヨハン・ホイジンガの「ホモ・ルーデンス」では文化が遊びの本能として始まったとし、怠けたり競ったりすることも含めた遊びの統一的概念がラテン語”ルードス”と名付けられている。イルカもルードスの文化があるのではというもの。

 もうひとつ、イルカは眠らない。その代わりに、聴覚的な白昼夢を見ているのではというもの。そのほか、音楽など精神レクリエーション(”ディアゴーグ ”)の自然発生的表現の中に宗教的な意味合いがあるとの説から、イルカにも音による宗教的意味合いを表現するものがいるのではというもの。

 ・第三部 ハングマンの帰還
 惑星探査手段として革新的な遠隔自律探査ロボット(テレファクター)、ハングマンが開発された。数百億以上もの超伝導性トンネル連結ニューリスター型電池を1立方フィートに詰め込んだ独自に決断を下せる冷却装置付き頭脳を持ち、さらに操作手の脳波をヘッドギアで増幅して遠隔で交信する機能も持つ。核融合装置で動き、自分で修理でき、人間の12倍程度の力を出せる。

 ところがハングマンは木星の衛星イオの探査後、エウロパで異常行動を取るようになり、カリスト探査を拒否、天王星ティタニアに上陸して観測データを送り始めたのち行方不明。それから20年後、メキシコ湾に着水し行方不明。その翌日、ハングマンをプログラム化した4人の創始操作手の一人が撲殺された・・・。

2冊部内留保

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