2016年1月3日日曜日

震災列島 石黒耀

講談社2004.10

 作者、石黒耀は内科医の現役。ただし少年時代から火山に魅了されていて、地震学会の「子ども地震火山サマースクール」にボランティア参加したこともあるとのこと(Wikipedia)。
 「震災列島」は、石黒耀にとって処女作「死都日本」に次ぐ2作目。この2作ともなんと日本地質学会表彰を受けているようです。

 主人公は46歳のボーリング屋(土質屋/地質屋)。東北大理学部卒、大学付属の東北地域地盤研究所を経て、父親と自営のボーリング屋を営んでいる。
 ストーリーは、東海地方の観測網で異常データが次々と検出され、政府が初の警戒宣言を出すが、発生した地震は東海地震の想定地震よりもはるかに弱いM6.8に留まる。その4ヵ月後、埼玉県南部でM6.9の地震が発生し、2000人を超える死者を出す。

 そうしたなかで、いよいよ本物の東海地震が発生するのではと社会的な不安が高まる中、主人公たちが住む名古屋市塩見区上汐町は地価が下落し、家を売って転居するもままならない。ところがこんな価値のない町で、ヤクザらしき者たちによる不可解な嫌がらせ行為が頻発。幸せな主人公の家族に悲惨な運命が襲う。

 打ちのめされた主人公たちは、ヤクザの不可解な行為の裏に、来たる東海地震の発生が関わることを突き止める。ヤクザらの行為はすべて合法的とされ、復讐するには自分たちの死を掛けた非合法手段しかなくなった主人公たちは、東海地震と東南海地震が同時発生することに賭けて、復讐を準備する・・・・。

・・・・というようなストーリー。名古屋弁が飛び交うコミカルな雰囲気と、家族を襲う悲惨な運命、東海地震と東南海地震の連動・非連動についての科学的な推論と、地震発生時のリアルな描写とが交錯し、文芸作品としてはいささか混乱気味で、読む人によっては評価がまちまちかもしれません。
 東海・東南海地震でメタンハイドレート層も崩壊する設定は本作品が初めてではないでしょうか。押し寄せる津波、沖合いに浮上するメタンハイドレートと、それへの着火という、まだ誰も見たことのない、本当にそんなことが起こるのかわからないシーンも描かれています。

詳細

12/18 13:00頃 気象庁が東海地方に多数設置している体積歪み計が静岡県のほぼ全域で異常値を検知し始める。
 13:17 御前崎北西の歪み値が気象庁が設定した監視レベルを超える。
2週間前から東海大学の深々度VAN法観測システムが異常パルスをキャッチ。
 13:43 産総研が御前崎市に設置している地下水ラドン濃度測定装置が高い値を示す。
 13:57 牧之原市相良の歪み値が監視レベルを超える。
 14:04 判定会(地震防災対策強化地域判定会)が注意警報を出す。
 14;21 岡山理科大が御前崎で計測している空中陽イオン密度が跳ね上がる。
 15:18 御前崎の空中電磁波ノイズ
 ? 御前崎北西、深さ10km、M6.8 白羽断層、死者14人。

4/3 埼玉県南部地震発生。震源さいたま市付近、深さ15km、M6.9 荒川断層。東北新幹線が脱線し犠牲者300人以上。
4/4 京葉コンビナートが爆発火災。全体で死者2000人超え。
5/26 諏訪地方、M7.1
8月に入って御前崎に異常値
8/13 東海大深々度VAN法観測地に異常値
8/30 東海地方に観測情報、駿河湾で小さな地震が散発
8/31 注意情報
 9:02 浜松沖、深さ20km、M5.1
 9:16 警戒宣言
 東海地震
 東南海地震

(横浜研開架)

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