講談社 2002年
作者は内科医だが子供の頃から火山に強い関心を持ち続け、本書がデビュー作となったもの。本作品は2005年に地質学会から表彰されている。
43人が火砕流の犠牲となった1991年の雲仙普賢岳の噴火では、火砕流の総量が100万立方メートル、総噴出量が0.2立方キロ。それに対し、1991年のピナツボ火山:総噴出量10立方キロ弱であり(火山爆発指数6)、さらに鹿児島湾奥部の姶良(あいら)カルデラは、約二万五千年前、総噴出量98立方キロの大噴火があり、その時の噴出火砕物の総量は13立方キロという(火山爆発指数7)。
本書はこのような壮絶な破局的噴火を描いたもの。
地殻内でマグマが帯水層に貫入するとマグマ水蒸気爆発が起こる。火口付近でマグマが連続的に発泡爆発する噴火形式をプリニー式噴火という。この場合、大規模な噴煙柱が形成されるが、それが崩壊すると噴煙柱崩壊型火砕流が生じる。火砕流には火砕サージ(高速高温のジェット噴流、灰神楽)を伴う場合がある。シラス台地とはこの火砕流が堆積したものである。
さらに、直径15~20キロの巨大なカルデラを形成するじょうご型カルデラ火山の破局的噴火がある。南九州の霧島火山帯には以下のじょうご型カルデラ火山が並んでいる。
・阿蘇カルデラ:30万年間に4回も破局的噴火。9万年前、7万年前に破局的噴火
・加久藤カルデラ:30万年前に破局的噴火
・姶良カルデラ:2万5千年前、総噴出量98立方キロメートル。入戸火砕流400立方キロ。シラス台地を形成
・阿多カルデラ:10万年前以降
・鬼界カルデラ:10万年前以降2回の噴火
これらの破局的噴火は過去12万年の間に6回宮崎県を襲ったという。
火砕流/火砕サージが通り抜けたあと、今度は降水による土石流ラハール、広範な降灰による被害、さらには全球的な気温低下”火山の冬”が続く。
破局的噴火が起こるメカニズムが興味深い。プレート沈み込み帯の背後は、日本列島では圧縮場による逆断層が多いが、なぜか引っ張り場による正断層が分布する地域があり、南九州もそのような地域のひとつ(鹿児島湾地溝)。
日南沖で海溝型地震が発生。その翌日から霧島火山帯で群発地震の発生が続く。海溝型地震の発生によってこの地域の圧縮場が解消され、本来なら正断層地震の続発によってこの地域が陥没してもおかしくないが、なぜか隆起している。それを深層マグマの貫入によるものと仮定してマグマ量を計算すると、わずか一週間で0.38立方キロとなり、破局的噴火の再来が予測された・・・。
火山豆石、狭蠅(さばえ)のようは降灰現象、黒ボク土壌、火山灰アスファルト
(時系列)
20XX年1月6日、海溝型のM7.2の日南沖地震が発生。その翌日から90キロ西の霧島火山一帯で群発地震が発生。
20XX年5月21日:火山噴火予知連が霧島群発地震に関する記者会見を開く。大規模な噴火の危機が迫っていると発表。
20XX年6月18日16時19分:霧島の韓国岳の大浪池で水蒸気爆発。
16時28分:浅層マグマ溜りが爆発しプリニー型/噴煙柱型噴火。直径3キロのカルデラ。
16時29分:じょうご型破局的噴火。直径16キロ、深さ平均500mのカルデラ。噴出マグマ量92立方キロ、火砕物量288立方キロ
(参考年表)
30万年前:加久藤カルデラが破局的噴火。
9万年前・7万年前:阿蘇山が噴火。
2万5千年前(2.9万年前?):姶良カルデラ(現在の鹿児島湾最奥部)が破局的噴火。総噴出量98立方キロメートル。入戸火砕流400立方キロ
6300年前:鬼界カルデラが破局的噴火。アカホヤ火山灰。
BC1628年:エーゲ海のサントリニ火山の破局的噴火、長径10キロのカルデラ湾。ミノア文明が滅亡。
BC12世紀:アイスランドのヘラク火山噴火でスコットランドと北アイルランド旧住民の9割が死亡。
AD79年:ヴェスヴィオ火山の噴火でリゾート都市ヘルクラネウム(エルコラーノ)とポンペイが壊滅
10世紀:白頭火山噴火で渤海国が滅亡。
1783年:アイスランドのラキ火山(ラカギガル火山)12.5立方キロの溶岩、火山の冬で1783天明の大飢饉、1789年のフランス革命に影響。1783年には浅間山の噴火も。
1794年:ヴェスヴィオ火山の噴火
1815年:ジャワのスンバワ島のタンボラ火山が破局的な大爆発。翌年は夏のない年。
1883年:インドネシアのクラカタウ火山が破局的噴火。噴出量18立方キロ。その後冷害等の影響が7年間続く。
1980年:セントヘレンズ火山:岩屑なだれ30億立方メートル
1985年:コロンビアのネバド・デル・ルイス火山が噴火し泥流2万9千人が死亡。
1991年:雲仙普賢岳の噴火。火砕流で43人死亡。火砕サージ、灰神楽、100万立方メートル程度。総噴出量0.2立方キロメートル
1991年:フィリピンのピナツボ火山
(横浜研開架)
JAMSTEC共済会サークル「SF倶楽部」が収集した地球・海洋SFを収録。これは書評ではなく、創作作品に登場する地球・海洋・生命科学ネタを紹介するものです。旧「地球・海洋SF文庫」よりこのBloggerに再登録完了。
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Contents
乗物:"潜水船", "潜水艦", "スーパー・サブマリン", "ロボット", "ダイビング", "モビルスーツ", "水上船舶", "調査船", "掘削船", "砕氷船"
行動:"救難", "サルベージ", "海洋調査"
都市と基地:"都市", "基地", "古代文明":
歴史:"地球史", "氷期", "考古学", "進化", "古代文明"
生物:"海棲ほ乳類", "モンスター", "頭足類", "軟骨魚類", "生態系", "進化", "海洋牧場", "水棲人", "微生物", "遺伝子", "パンデミック"
資源・エネルギー:"海底資源", "エネルギー", "ハイドレート", "海洋牧場"
気候・環境:"気象・気候", "海面上昇", "大異変", "極域", "環境汚染", "衝突"
固体地球:"地震・火山", "噴火", "津波", "熱水噴出", "地球内部", "マントル"
分類ラベルの付け方(必ずお読みください)
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