2016年1月5日火曜日

天空の劫罰/ NEMESIS ビル・ネイピア

1998年 新潮文庫

 作者のネイピアは北アイルランドのアーマー天文台の現役天文学者。彗星を発見した同僚が、彼の名にちなんで<ネイピア7096>と命名している。

 6ヶ月前にロシアが打ち上げた火星向けの有人宇宙船フォボス5号の交信記録に暗号が隠されており、実は打ち上げ時に10メガトンの水素爆弾が搭載されているとの情報がもたらされる。小惑星の軌道を変えて米国に衝突させようとしているとの推測により、NATO陣営の最高の頭脳たちが集められ、その未発見の小惑星<ネメシス>の探索と軌道修正のためのシャトル打ち上げ準備を開始した。

 ベータ・メーザーによる小惑星の熱伝導度計測、ROSAT(X線源サーベイ用衛星)、IRAS(赤外線天文衛星)による小惑星の軌道を変えるための核爆発の探知、ORICS衛星と潜水艦との間のブルー・グリーン・レーザー通信などが登場する。

 これまで小天体衝突物といえば衝突回避のための宇宙ミッション、若しくは、衝突前後のパニック物だったが、本作品は、そのどちらでもない推理サスペンスである。

(横浜研開架)

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