ラベル 石黒耀 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 石黒耀 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2016年1月3日日曜日

死都日本 石黒耀

講談社 2002年

 作者は内科医だが子供の頃から火山に強い関心を持ち続け、本書がデビュー作となったもの。本作品は2005年に地質学会から表彰されている。

 43人が火砕流の犠牲となった1991年の雲仙普賢岳の噴火では、火砕流の総量が100万立方メートル、総噴出量が0.2立方キロ。それに対し、1991年のピナツボ火山:総噴出量10立方キロ弱であり(火山爆発指数6)、さらに鹿児島湾奥部の姶良(あいら)カルデラは、約二万五千年前、総噴出量98立方キロの大噴火があり、その時の噴出火砕物の総量は13立方キロという(火山爆発指数7)。
 本書はこのような壮絶な破局的噴火を描いたもの。

 地殻内でマグマが帯水層に貫入するとマグマ水蒸気爆発が起こる。火口付近でマグマが連続的に発泡爆発する噴火形式をプリニー式噴火という。この場合、大規模な噴煙柱が形成されるが、それが崩壊すると噴煙柱崩壊型火砕流が生じる。火砕流には火砕サージ(高速高温のジェット噴流、灰神楽)を伴う場合がある。シラス台地とはこの火砕流が堆積したものである。

 さらに、直径15~20キロの巨大なカルデラを形成するじょうご型カルデラ火山の破局的噴火がある。南九州の霧島火山帯には以下のじょうご型カルデラ火山が並んでいる。
・阿蘇カルデラ:30万年間に4回も破局的噴火。9万年前、7万年前に破局的噴火
・加久藤カルデラ:30万年前に破局的噴火
・姶良カルデラ:2万5千年前、総噴出量98立方キロメートル。入戸火砕流400立方キロ。シラス台地を形成
・阿多カルデラ:10万年前以降
・鬼界カルデラ:10万年前以降2回の噴火
 これらの破局的噴火は過去12万年の間に6回宮崎県を襲ったという。

 火砕流/火砕サージが通り抜けたあと、今度は降水による土石流ラハール、広範な降灰による被害、さらには全球的な気温低下”火山の冬”が続く。
 破局的噴火が起こるメカニズムが興味深い。プレート沈み込み帯の背後は、日本列島では圧縮場による逆断層が多いが、なぜか引っ張り場による正断層が分布する地域があり、南九州もそのような地域のひとつ(鹿児島湾地溝)。

 日南沖で海溝型地震が発生。その翌日から霧島火山帯で群発地震の発生が続く。海溝型地震の発生によってこの地域の圧縮場が解消され、本来なら正断層地震の続発によってこの地域が陥没してもおかしくないが、なぜか隆起している。それを深層マグマの貫入によるものと仮定してマグマ量を計算すると、わずか一週間で0.38立方キロとなり、破局的噴火の再来が予測された・・・。

震災列島 石黒耀

講談社2004.10

 作者、石黒耀は内科医の現役。ただし少年時代から火山に魅了されていて、地震学会の「子ども地震火山サマースクール」にボランティア参加したこともあるとのこと(Wikipedia)。
 「震災列島」は、石黒耀にとって処女作「死都日本」に次ぐ2作目。この2作ともなんと日本地質学会表彰を受けているようです。

 主人公は46歳のボーリング屋(土質屋/地質屋)。東北大理学部卒、大学付属の東北地域地盤研究所を経て、父親と自営のボーリング屋を営んでいる。
 ストーリーは、東海地方の観測網で異常データが次々と検出され、政府が初の警戒宣言を出すが、発生した地震は東海地震の想定地震よりもはるかに弱いM6.8に留まる。その4ヵ月後、埼玉県南部でM6.9の地震が発生し、2000人を超える死者を出す。

 そうしたなかで、いよいよ本物の東海地震が発生するのではと社会的な不安が高まる中、主人公たちが住む名古屋市塩見区上汐町は地価が下落し、家を売って転居するもままならない。ところがこんな価値のない町で、ヤクザらしき者たちによる不可解な嫌がらせ行為が頻発。幸せな主人公の家族に悲惨な運命が襲う。

 打ちのめされた主人公たちは、ヤクザの不可解な行為の裏に、来たる東海地震の発生が関わることを突き止める。ヤクザらの行為はすべて合法的とされ、復讐するには自分たちの死を掛けた非合法手段しかなくなった主人公たちは、東海地震と東南海地震が同時発生することに賭けて、復讐を準備する・・・・。

・・・・というようなストーリー。名古屋弁が飛び交うコミカルな雰囲気と、家族を襲う悲惨な運命、東海地震と東南海地震の連動・非連動についての科学的な推論と、地震発生時のリアルな描写とが交錯し、文芸作品としてはいささか混乱気味で、読む人によっては評価がまちまちかもしれません。
 東海・東南海地震でメタンハイドレート層も崩壊する設定は本作品が初めてではないでしょうか。押し寄せる津波、沖合いに浮上するメタンハイドレートと、それへの着火という、まだ誰も見たことのない、本当にそんなことが起こるのかわからないシーンも描かれています。

昼は雲の柱/(改題)富士覚醒 石黒耀

2006年 講談社、文庫版2011

 富士山を題材。
amazon:4062137054

(横浜研開架)

カグツチ 石黒耀&正吉良カラク

2002年 原作・監修:石黒耀「死都日本」 シリーズ構成:外薗昌也 漫画:正吉良カラク

 =>オンラインサイト
カグツチ (漫画)