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2016年5月3日火曜日

クラゲが飛んだ日 ブルース・スターリング ルーディ・ラッカー

1994年 ハヤカワ文庫『タクラマカン』に収録

 数学おたくのプログラマー兼水族館員のタグ・メソグリーアは、自宅の水槽に「ミズクラゲ」、吊り鐘型クラゲ、「ヤナギクラゲ」、毒キノコみたいな斑点のあるクラゲ、「クシクラゲ」(テノフォール)、「鉢クラゲ」ほかを飼っている。タグは、人工クラゲ・アルゴリズムと圧縮プラスチックのマイクロビーズ成形材をレーザービームで焼結することによって、ゼラチン質のロボットクラゲを開発することに成功する。

 一方、ベンチャー投資家のレヴェル・プランはテキサス州ディザリーの油田から滲み出る「ウルシュライム」(Urschleim)を持参してきた。彼はこれを地球内部深くからやってきた原初のスライムと信じている。このウルシュライムを空気で膨らますと、なんとタグの人工クラゲとそっくりの空気クラゲが生まれる。実はタグがレヴェルに送った人工クラゲがプールから地層内に染み出てしまった後、この空気クラゲが誕生するようになったのだ。
 2人は人工クラゲとウルシュライムによる空気クラゲで一儲けしようと企むが・・・。

2016年5月1日日曜日

塵クジラの海 ブルース・スターリング

1977年 2004ハヤカワ文庫FT

 惑星<水無星(みなぼし)>の赤道には深さ約110キロ、幅800キロの巨大クレーターがある。これは約10億年前に反物質隕石の集中的衝突によるもの。大気の90%以上がクレーター内に溜まり、その下方はほぼ単原子からなる塵が積もった海となっている。居住可能地域はクレーター内に限られ、しかし不思議なことに大気の希薄なクレーター外の地域に先行文明の遺跡が存在する。

 クレータ内には最大の都市「高つ嶋」、鴎半島、五星諸島(入植地アルナールほか)、足折諸島(水耕栽培場がある)、高さ110キロ、幅80キロの<崖>、堅忍(宗教と政治の中心地)、寸光湾(縦80キロ、横42キロの卵型)などがある。

 塵海最大の生物が塵鯨。空気呼吸する冷血動物で、体長20m、幅約10m、ヒラメのような形で体の大半が頑丈な髭のびっしり生えた巨大な口。全身に黒と灰色の八角形の市松模様。血液は紫色。その腸はシンコフィーネ(隠語フレア)という麻薬の唯一の原材料となっている。塵鯨は養殖されていて、一頭を殺すたびに受精卵(幅30cm、重さ25キロ)3個を塵海に散布することになっている。

 塵海にはこのほか飛び魚(パイロット・フィッシュ)を伴う鮫の群れ、オキアミ、シリコンの外殻を持ったさまざまな色と形状のプランクトン、節足動物、小魚、蟹、蛸(草食)、何百万匹も海面を埋め尽くす塵馬(ちりんぼ)、何百平方キロにも広がるリリパッドという光合成植物(一枚の丸い葉が直径何mもあり、厚さは2cm以下)、鰯もどき、葉齧り、葉掘り、茎穿ち、葉吸い、根食い、虫瘤作り、絶滅危惧種の磯巾着(成長すると)、磯巾着、がいる。

 この塵海は音響探査も光学的探査もできず、超セラミックの釣り糸で測深をしてもその測深のたびに水深が食い違い、途中で切断されてしまう。

 この海に主人公は捕塵鯨三胴船<ラングランス号>(長さ31.5m、最大幅27m、マスト4本、20種類の帆、乗組員26人)で乗り出す。ついには、この海の謎を解くために船長らは塵鯨の外殻を使った潜塵艇を組み立てて潜航し・・・。

2016年1月3日日曜日

スキズマトリックス ブルース・スターリング

1985年 ハヤカワ文庫SF

 そのラストで人類が海生/水生の「ポストヒューマン」に変容、ユーロパの内部大洋に移住しますが、その変容のための遺伝子を採取するため、立ち入り禁止になっている地球圏の深海底の熱泉生命の採取がおこなわれます。この際、偶然、沈潜となった原子力潜水艦の廃炉を熱源とするミニ生態系が発見されます。この手のアイデアとしてはたぶん最初のものではないかと思われます。(by 永瀬唯さん)

 宇宙に2億人の人類、何百もの居住空間が進出。月周辺にいくつものスペースコロニーが建設され連鎖国家を成している。さらに小惑星帯と土星の輪にも広がろうとしている。人工器官で人体改造する<機械主義者>とバイオテクノロジーによる<生体工作者>が対立する世界。

(横浜研開架)