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2016年5月5日木曜日

滅びし獣たちの海 星野之宣

1990年 ビッグコミック・オリジナル掲載

 第2次大戦中、過酸化水素を酸化剤とするワルター・タービン搭載、8基の中距離弾道弾を搭載する試作潜水艦V100<ベーオウルフ>、ドイツ海軍の大戦艦<ビスマルク>、が登場する。<ベーオウルフ>は弾道弾発射筒の故障により行動不能となり、海流によって海の底の自然トンネル内を流され、英国内のある湖に浮上する・・・。

2016年5月4日水曜日

原潜迎撃/Deep Sound Channel ジョー・バフ

原著2000、ソニーマガジンズのヴィレッジ・ブックス,2003

 米国やロシアの原潜が登場する作品は数多いが、このシリーズはセラミクッス製船殻を持ち、水深4000m以上の潜航能力を持ち、珍しくSF性の強い原潜同士の戦いが描かれている。

 戦術核魚雷による潜水艦バトルはむしろチェスのようで,あまりワクワクするような話ではないのですが、ヒロインが南アフリカ出身、スクリプス海洋研で海洋学の博士号を取ったという設定。

 このヒロインはドイツの天才的な潜水艦艦長の元恋人だったが、肉親を南アフリカ政権に殺され、連合国側の新鋭原潜<チャレンジャー号>に海洋科学アドバイザーとして協力することになる。<チャレンジャー号>の艦長代理が人間関係では不器用ないささか屈折した人間で、この艦長代理とヒロインとの関係が面白い。

 物語は、2011年、ドイツと南アフリカで武力衝突が勃発し、超国家主義者が政権を掌握。ついに英米を中心とする連合国との間で小型の戦術核を応酬しあうというかなり沈鬱な世界。アーケア(好熱性の古細菌)を細菌兵器化する秘密研究所を核で破壊するために米新鋭原潜<チャレンジャー>は SEAL部隊を送り込む。ライバルは同等の性能を持つ南アフリカ側原潜<フォールトレッカー>。

2016年5月3日火曜日

ドス・アギラス号の冒険 椎名誠

たむらしげる 画, 偕成社 1991年

 ボクス船長と歴史学者・群島生物学者のコロンバス博士は、ドス・アギラス号(三羽の鷲の意味)で冒険の旅に出る。風を吸い込んで背後に激しく吹き出す<<オムの回転帆>>を動力とし、揺れをなくす螺旋舵、くいつきアンカーを装備し、4人の武装船員を率いている。

 目的地は南オクトパス諸島のヌル海峡に面するガブリエール島。秘境中の秘境として名高いその島の奥地に隠された翼のある卵「飛び玉」を探しに向かう。その行く手にはトパス海域の竜巻「怒れる海牛」、東ヌル海の高さ500mの隆起噴流「竜の衝立」などが立ちはだかる・・・。

 波乗り魚、あばれ手長藻、エンリケ・ベラの星まねし、舞魚、噴射イカ、ともしび貝などの海洋生物、ドリル・バード、さしわたし1800mの巨大な鳥などが登場する。

(その他の乗組員)
機関長:ドノバン
専任見張り役:ミルトソン
一等航海士兼船員コック:すり足マック
海釣り人:フック

海賊ジョリーの冒険 カイ・マイヤー

2003~2004,あすなろ書房2005~2007

1 死霊の売人、2 海上都市エレニウム、3 深海の支配者

 1692年,海賊の巣窟として悪名をはせていたジャマイカ島のポート・ロワイヤルでは大地震で二千人以上が命を落とし、魔力が解き放たれ、ミズスマシと呼ばれる子供たちが生まれる。その14年後。ジョリーはトルチュ島(ハイチ島のすぐ北)の奴隷市場で売られていたところを海賊バノンに買われ海賊として育てられる。生まれつき水の上を歩けるミズスマシの一人。

 ジョリーたちの〈やせっぽちのマディ〉号はスペインのガレオン船を襲撃するが、毒グモのワナに仲間を失う。脱出したジョリーは名もない孤島で同じミズスマシのムンクに出会う。

 この島をマーレ・テネブロズム〈暗黒の海〉からマールシュトローム〈大渦潮〉を通ってきたアケロンが襲う。ジョニーと両親を失ったムンクは、死霊の売人に連れられてニュー・プロヴィデンス島ポート・ナッソーを訪れ、そこで新たな仲間と出会う・・・。

2016年5月2日月曜日

深海のYrr :THE SWARM フランク・シェッツィング

ハヤカワ文庫NV,2008 姓のaはウムラウト
 
先月ドイツを訪問した際に、ブレーメン大学でお会いしたBohrmann教授から日本人(メタンハイドレートの松本良教授、AUVの浦環教授)も登場して面白いからと1冊のペーパーバック(881ページ!)をいただきました。今日、やっと読み終わり、西村さんの要請もあり、ごく簡単に紹介します。

 邦訳はまだなさそうです。ドイツではベストセラーで国際的に200万部以上売れたと表紙にあります。
 読後の感想は、まずたいへんに面白く読み始めたら止められない。副題が「深部(海)の小説」で、たいへんにスケールの大きな,海洋地球生物SFです。
 科学的にいいかげんなところがなく(現在の知見をフルに動員しているようである)、Bohrmannほかも実名で登場し活躍する内容です。

 どういう話かは、言えません。言えませんが、海洋の生物、環境が異常を来し始めて、人間社会に影響をもたらし始めます。さまざまな性格の登場人物が、そのわけを探って行くうちに、とてつもない問題であることがわかってきます。問題を認識対処するのに、科学者がどういうものか非常にわかっている描写になっています。読むうちに、気候変動、海洋循環、プレートテクトニクス,極限環境生物,生物多様性、環境問題などがすべて関係してきます。そしてそれ以上の話です。言ってしまうと、私が経験した、読み進むうちの興奮が損なわれると思うのでここまでにします。(by K.S.さん)

 この作品、”『海洋科学基礎講座』全6巻をハリウッドのパニック映画にした”といえばよいだろうか。普通の長編小説の数冊分にも匹敵する比類なき海洋SF大作である。ジェームズ・ポーリックの『腐海』という海洋SFの傑作があるが、有毒渦鞭毛藻類というプランクトンが人類を襲う。本作品でもこれが猛威をふるうほか、メタンハイドレートを食べるアイス・ワーム、旺盛な繁殖力のカワホトトギスガイ、猛毒のヒョウモンダコやハブクラゲ、眼が退化したユノハナガニなど少々マニアックな生物が人類を脅かす。

 さらに海洋大循環、プレートテクトニクス、大陸棚斜面や海洋島の崩壊、化学合成生態系など注目されている地球科学のウンチクが語られ、また、独調査船〈ゾンネ〉や砕氷船〈ポーラーシュテルン〉、東大浦研究室の自律型水中ロボット、各種の地球観測衛星、一人乗り水中滑空潜水艇、大気圧潜水服など実在の海洋メカもひととおり登場する。

 てっきり海洋オタクの一発もの作品かと思えばそうではない。元ミュージシャン志望、広告代理業も経験したという文系の人気作家であって、しかしその熱心さと筆力はタダモノではない。本書より先に翻訳されたノンフィクション『知られざる宇宙-海の中のタイムトラベル』では、ビッグバン以降、地球46億年の歴史から、生命の起源、海洋生態系、さらには浮遊式人工島ほか海洋工学分野を網羅する第一級の啓蒙書である。しかも図や表をいっさい使わず、巧みな比喩で一気に読ませてしまう。

 登場人物は、映画俳優似で女性にもてもての中年ノルウェー人生物学者と、イヌイット出身で恋愛に臆病な若い鯨類生態学者という対称的な2人を主人公とし、恋愛が絡み、敵キャラの人物像にも厚みがあり、サービス満点のエンターテインメントである。著者は映画とワインも大好きなようで、そこかしこに映画や俳優への言及があるのも楽しい。(SFマガジン掲載)

2016年4月30日土曜日

クライシス・ブルー がる~

オンライン作品(行方不明)

 地球の温暖化現象は加速度を増し,数々の異常気象、海面上昇、海流の停滞現象が起き海洋資源にも多大な影響をおよぼし始めた時代。「海を故郷にしよう」をスローガンにOHA(Ocean Home Association)が結成され、そこに所属する海洋調査用潜水艦<ルビーマンタ号>が活躍する。

=>クライシス・ブルー(がる~さんの電脳庫密倶より)

2016年4月28日木曜日

研究者たちの海 寺本俊彦

成山堂 1994年

 シーオメガ計画-国際科学技術洋上研究所(いわゆる巨大空母)構想、しんかい6500、白鳳丸、ニューラル・ネットと自律型(無策式)無人機、AQUA EXPLORER 1000、水中歩行ロボット-アクアロボ、水中音響技術、バイオテレメトリ、魚の音響馴致、海洋大循環、黒潮、水位変動、氷海研究、深層水、イルカと音、抗ガン剤探しなど。

2016年1月2日土曜日

蒼き海の伝説 西村寿行

徳間書店のTOKUMA NOVELS 1975年

 西村寿行というとバイオレンス・ポルノとまではいかないが、伝承+暴力+ロマンの入り混じった作品で人気の作家ですが、本作品は極めて珍しく本格的な推理モノ。
(永瀬唯さんによると、もともとは本格ミステリーでデビューされていて、ノンフィクション『世界新動物記』も出版されており、薬品会社のプロパーという職歴をお持ちで、野生動物や博物学、生物学への造詣もきわめて深い方だとのこと。)

 8月17日に小型の台風が四国を縦断。日本海に抜けた8月19日に異常高潮が沖縄から千葉県までの太平洋沿岸全体に発生。満潮時より1.2mも高いこの異常高潮は11日間居座った後に消えるが、その8月30日、高知県足摺岬で若い女性の溺死体が発見されるところから始まる。

 死亡経過日数は約十日前後と推定され、黒潮の上流である九州南方から沖縄までのどこかで入水したと推定されるが、該当するような行方不明者の届出はなく、事件は迷宮に。

 ところが別の医療過誤事件に絡んで、看護婦の日野克子が8月19日に伊東のマリーナから病院長とボートで沖に出たのを最後に失踪。刑事は病院長が伊豆半島沖で克子を殺害したことを立証しようとするが、その克子が黒潮を600キロも遡った足摺岬の溺死体であることが判明・・・。

 スリルあり、人妻とのロマンスあり、医療事故隠蔽など社会問題ありと、さすが売れっ子作家ならではの内容。

 熊野の渡海信仰、漁師たちの「お化け潮」の噂などをヒントに徐々にその謎が解き明かされていきますが、運輸省異常高潮調査委員会なるものとその事務局の海上保安庁水路部海象課長が登場するという点でもなかなかユニークな推理小説です。

(部内留保)