2016年5月4日水曜日

原潜迎撃/Deep Sound Channel ジョー・バフ

原著2000、ソニーマガジンズのヴィレッジ・ブックス,2003

 米国やロシアの原潜が登場する作品は数多いが、このシリーズはセラミクッス製船殻を持ち、水深4000m以上の潜航能力を持ち、珍しくSF性の強い原潜同士の戦いが描かれている。

 戦術核魚雷による潜水艦バトルはむしろチェスのようで,あまりワクワクするような話ではないのですが、ヒロインが南アフリカ出身、スクリプス海洋研で海洋学の博士号を取ったという設定。

 このヒロインはドイツの天才的な潜水艦艦長の元恋人だったが、肉親を南アフリカ政権に殺され、連合国側の新鋭原潜<チャレンジャー号>に海洋科学アドバイザーとして協力することになる。<チャレンジャー号>の艦長代理が人間関係では不器用ないささか屈折した人間で、この艦長代理とヒロインとの関係が面白い。

 物語は、2011年、ドイツと南アフリカで武力衝突が勃発し、超国家主義者が政権を掌握。ついに英米を中心とする連合国との間で小型の戦術核を応酬しあうというかなり沈鬱な世界。アーケア(好熱性の古細菌)を細菌兵器化する秘密研究所を核で破壊するために米新鋭原潜<チャレンジャー>は SEAL部隊を送り込む。ライバルは同等の性能を持つ南アフリカ側原潜<フォールトレッカー>。


詳細

 <チャレンジャー>はヴァージニア級4番艦で艦番号778。実際のバージニア級4番艦は<ノース・キャロライナ>(艦番号777)。<チャレンジャー>はバージニア級同型ではなく、船殻がセラミックス混合アルミナ。いわゆる傾斜機能合金製で最大潜航深度はなんと15,000ft(4,500m)。建造費約37億ドル。水中最大速力52?ノット。無音最高速力25ノット。乗組員120人。ワイド・アパーチャー・アレイ、TB-29アレイ(長さ半マイル), TB-16D右舷側太線。Mk48 ADCAP、Mk88核魚雷。ヒドラジン・ガス発生機による非可逆的な非常ブロー手段を持つ。ASDS:先進型SEAL兵員輸送システム(長さ65ft、ロッキード・マーチン製)、イルカ型ロボットのSDL:兵員輸送艇、LMRS:長時間型機雷偵察システム、ISLMM:改良型潜水艦発射可動機雷を持つ。

 青緑色レーザー目標選別器で追尾してくる魚雷がポンプジェットが終端誘導速度に切り替わり、アクティブ/レンジゲート・モードに切り替わり、ブースター・ロケットに点火、超キャビテーション速度に移行100ノットからさらに加速するシーンがかっこいい。

 地球科学的なテイストもちらほら。衛星からの海中レーザー探査を逃れるために酸化鉄を散布して植物プランクトンを大増殖させるとか、サウンド・チャンネルとか、ロドリゲス海嶺、モザンビーク海盆とアガラス海盆とプリンス・エドワード断裂帯に挟まれた熱水活動域にある2つの熱水噴出を利用して音響レンズを作り、敵艦よりも遠方から探査を試みるとか。

0 件のコメント:

コメントを投稿