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2017年1月30日月曜日

夢みる葦笛, 上田早夕里

短編集。光文社2016.9.20


「夢みる葦笛」:歌うイソギンチャク人間
「眼神(マナガミ)」:
「完全なる脳髄」:十個の生体脳を自分の体の各所に移植した人間。
「石繭」
「氷波」:土星の輪でサーフィン
「滑車の地」:地表面を冥海に覆われた惑星。冥海にはさまざまな泥棲生物(ヒジ)が棲む。人はいくつもの塔に住み、塔の間にはロープが渡され、人々は滑車で移動する。
「プテロス」:メタンの雲からメタンの雨が降り、液体エタンの池がある太陽系外惑星に棲むシリコン系の飛翔生物。高さ300mの〈凍石柱〉はプテロスの幼体が積み重なったもの。
「楽園(パラディスス)」:メモリアル・アバター
「上海フランス祁斉路(チジロ)320号」
「アステロイド・ツリーの彼方へ」



2016年5月7日土曜日

薫香のカナピウム 上田早夕里

文藝春秋 2015.2.10http://www.amazon.co.jp/dp/B00T912CUW

 熱帯雨林に適応した小型の人類が主人公の物語。
「カナピウム」の説明が出てこないが、キャノピー(天蓋型の日除け)のラテン語で、蚊を追い払う網のついたベットの意味らしい。主人公たちが住む熱帯雨林の中の木の上の住居のことかもしれない。...

「華竜の宮」/「深紅の碑文」の世界との繋がりについても、どこにも説明がないが、人類が存亡の危機にあって、自ら新たな進化の方向を模索している状況の中での、ある時代の熱帯の島が舞台。白亜紀型のスーパープルームの時代かもしれない。

2016年5月3日火曜日

異形コレクション 進化論 

2006/8/10, 井上雅彦編,光文社文庫
 短編なのであらすじ紹介すると即ネタバレになってしまうし,といって,フィクションの中の科学ネタや設定を紹介するのがこのMLでもあるし・・・・,ということでネタバレにはご容赦願います。
 
・「神の右手」藤崎慎吾
 地球上ではほんどのアミノ酸がL型であることを利用して,ある研究者が潜水調査船で熱水噴出域に潜航し,D型アミノ酸を使ったタンパク質合成実験を行おうとするが,謎の妨害が・・・。
・「魚舟・獣舟」上田早夕里
・「罠の前でひざまずいて」西崎 憲
 エーゲ海のある島に700人以上の研究者が集められ,そのうち進化論チームは,シーラカンスやゴキブリが何億年も形態変化しないで生き続けていることに対して,「変化というものが根本的な属性になっている生物」を創ることを試みる・・・。
・「量子感染」平谷美樹
 各地で生物が相次いで大量死する。大阪ではカブトガニ,琵琶湖ではブル-ギル,秋田県ではカエル,青森市では雀。いずれも血液中のヘモグロビンが酸素と結びつかないメトヘモグロビンに変質していることが判明。公安警察の特殊テロ捜査班が一人の研究者を現行犯逮捕するが・・・・・。
 ジャンクDNA,眠っている遺伝子を活性化する《プロモーター》,ウイルスを使ったファージ変換,EGFレセプター,リガンド/増殖因子,中間領域(メソ)量子論,量子の絡み合い(コーヒレント),フェルミ凝集体などの用語が登場する。また,先カンブリア時代のエディアカラ生物群のスパタンゴプシス, ディッキンソニア,アルムベリア,イナリア,軟体三葉虫,スプリッギナ,チャーニオディスカス,バーバンコリナが登場する。
・「娘の望み」八杉将司
 先天性小児失語症の娘が5歳で絵と音楽に天才的な才能を発揮する。やがて母親が言葉を嫌うようになり,やがて娘とその作品が有名になるにつれて,既存の言語文化が変質しはじめる・・・・・・。文化的遺伝子『ミーム』という言葉が登場。
・「うしろへむかって」井上雅彦
 哺乳類/人類の大脳皮質を発達させた原因として,夜行性という能力を獲得したこと,形態が放射状ではなく左右対称で前方に対する感覚が発達した反面,背後への恐怖があることなどを論じている。
・「バード・オブ・プレイ」多岐亡羊
 陰陽師モノ。高層ビルからの転落死が相次ぎ,その現場には鴉(からす)の群れが。
・「希望的な怪物 hopeful Monster」小中千昭
 都心の地下鉄や下水道などの地下トンネルに迷い込んだ者が「白い肌で禿頭の者」に出会ったといういくつかの都市伝説。
・「読むべからず」飛鳥部勝則
 あらすじを書くと答えになるので。
・「ランチョウの誕生」
 すみません。この作品だけはパス。金魚の品種改良になぞらえているが,それ以上書くと答えになる。
・「この島にて」朝松 健
 室町時代,土佐沖の小島。えーと妖怪・陰陽師モノというか。
・「書楼飯店」蒼柳 晋
 紙魚(しみ)という小さな虫。さまざまな文字を食むことで,その文字に込められた姿形や現象などを吸収している。紙魚料理店では生きた紙魚を料理として客に饗する。会員制であり,会員となるには女性がある通過儀礼を通らなければならない・・・・。
・「貂の女伯爵,万年城を攻略す」谷口裕貴
 人間によって知性化されたという伝説を持つ動物たちの文明世界。そこでは人間は今や奴隷の身分に過ぎない。その人間が反乱を企てようとするが・・・・・。
・「個体発生は系統発生を繰り返す」竹本健治
 あらすじ書けず。
・「ヤープ」平山夢明
 知性化された猿の話。
・「楽園の杭」野尻抱介
 テロを企てて逮捕され,遷光速駆動の恒星間探査船のヒューマンファクターとして登場させられた女性主人公。到着した地球型海洋惑星にはなんと軌道エレベータが存在した。にもかかわらず地表面には技術文明が一切存在しない。軌道エレベータのテザーの基礎部分は地表面から1000kmまで達し,年間4mで移動するマントル・プルームに絡められていた・・・・・・。
・「逆行進化」堀 晃
 衛星画像から,熱帯林のはずれに,最も原始的な緑黄体が存在することが発見された。そこは小型のクレーター跡で,地表面に海苔か苔のようなものがべったり貼りついていた。それは現生代中期の葉緑体そのものであることが判明し・・・・・。
・「おもかげレガシー」梶尾真治
 他人に近付きすぎると,その人の記憶が自分に流れ込んでくる女性。以下あらすじは掛けませんが,ホっとさせてくれる話です。

2016年5月1日日曜日

ゼリーフィッシュ・ガーデン 上田早夕里

「小松左京マガジン」第8巻

 第三回小松左京賞の最終選考候補作(「桓崎由梨」。選評は「小松左京マガジン・第8巻」に掲載)。浮遊型海洋実験都市《ブルー・モジュール》で働く研究者とスタッフの仕事を、専門書ではなく、一般向けの科学雑誌の記事を書いて生活しているサイエンス・ライターが取材するという話。

 《ブルー・モジュール》は、海洋関係の学術調査と、各種の海洋開発・海洋実験を行う実験都市で、研究都市としての側面と、海洋資源開発の経済的発展を促進するという、ふたつの貌を持っている。出資の大半は一般企業に頼っているが、学術方面からの支持と要請があるため、この両側面を成立させるべく、運営に関しては、微妙なバランスが保たれている。

 この実験都市上で働く深海生物研究班の中に、深海のクラゲを研究しているスタッフがおり、彼らが研究している新種のクラゲが、ストーリー展開上の軸となる。深海探査の機器としては、「しんかい6500」をモデルに著者が創作した、有人潜水調査船「かいりゅう」が登場する。その他、深海で調査船のアシスタントとして働く人工知能搭載の無人探査機、レスキュー・ロボット、なども出てくるが、このあたりも、JAMSTECで使われている実在の機器をモデルに、著者が創作している。

=>上田早夕里さんのサイト
=>上田早夕里さんのブログ

2016年1月2日土曜日

火星ダーク・バラード 上田早夕里

2003年11月25、角川春樹事務所、20008、ハルキ文庫

 第4回小松左京賞受賞。応募総数131作品の中から受賞。
 天蓋で覆った空間を地球化するパラ・テラフォーミングの行われている火星。標高2万1千mのパヴォニス山には軌道エレベータが建設されており、その山頂と裾野をぐるりと取り囲んで天蓋に覆われた観光都市イクエイターがあり、そこから少し南下した先にある迷路のような峡谷に天蓋都市ノクティス・ラビリンサス、そして火星最大の巨大天蓋都市ヴァレス・マリネリス(全長4000km、深さ7km、最大幅700km)がある。各都市は時速600kmのリニアモーターカーで結ばれている。

 火星治安管理局第2課第3班の捜査官、水島烈(地球歴で30才、地球生まれの移民)と神月璃奈(火星生まれ)は連続女性殺人犯ジョエル・タニを追いつめるが、リニアモーターカーで護送中に異常な状態が発生。神月璃奈は惨殺され、ジョエルは逃走し、無傷の水島烈はジョエルとの共犯を疑われる。そのリニアモーターカーには火星総合科学研究所のデザインド・ベイビーでプログレッシヴと呼ばれるアデリーン(ダークブロンドの髪、地球歴で15才)が同乗していた・・・。

ゼウスの檻 上田早夕里

角川春樹事務所 2004年

 長編第2作目。木星とエウロパのラグランジュ点に浮かぶ宇宙ステーション<ジュピターI>が舞台。そこには遺伝子操作によって両方の性を持つこととなった人類、ラウンドが唯一住むことの許された特区がある。

 生命倫理の逸脱を糾弾するテロ・グループ<生命の器>が<ジュピターI>の襲撃を予告。火星から警備隊が急遽派遣される。侵入経路が限定される<ジュピターI>でテロリストを迎撃するのは容易と思われたが・・・。

 エウロパそのものは直接舞台とならないが、エウロパ生態系研究者が重要な役どころを果たす。
 両性を持つラウンド同士の性器がどう繋がるかについて、グレッグ・イーガンの「祈りの海」とも異なる方式。

(横浜研開架)

ブルーグラス 上田早夕里


2004年、『小松左京マガジン』第13巻、『魚舟・獣舟』2009,に収録の短編

 ダイビング・スポットとして有名なO県M岬沖の礁湖。環境悪化による珊瑚の激減が問題となり、保護区域に指定して海洋ドームが建設されることとなった。環境悪化は新型潜水具リブリーザー(閉鎖循環式潜水具)の普及によるダイバーのマナー低下が原因だ。

 「ブルーグラス」は外部の物音に応じて化学反応を利用して成長するインテリア・オブジェ。主人公はかつて自分が礁湖に沈めたブルーグラスを見にM岬を訪れる・・・。

(部内留保)

真朱の街 上田早夕里

2008年、『異形コレクション・第40巻「未来妖怪」』より、光文社文庫、『魚舟・獣舟』2009に収録

妖怪モノらしい。

(部内留保)

饗応 上田早夕里

『異形コレクション・第39巻「ひとにぎりの異形」』より(光文社文庫)2007年、『魚舟・獣舟』2009に収録

内容不明

(部内留保)

くさびらの道 

『異形コレクション・第38巻「心霊理論」』より、2007年。光文社文庫、『魚舟・獣舟』2009に収録

ユーレイもの?

(部内留保)

魚舟・獣舟 上田早夕里

『異形コレクション・第36巻「進化論」』より,光文社文庫 2006年

 陸地の大半が水没した世界に適応するため,ヒトの遺伝子の98%を占めるトランスポゾンやノンコーディングRNAの領域を使って「魚舟」が創りだされる。魚舟は全長30mを超える巨大魚で,海上民はその背中の居住殻と上甲板で暮らす。〈操舵者〉を持てなかった魚舟は,魚とワニが混じりあったような体長17mの「獣舟」に変異し,陸の資源を食い荒らすようになる。それには秘密が・・・。

(横浜研開架)

2015年12月4日金曜日

華竜の宮/深紅の碑文 上田早夕里

ハヤカワSFシリーズJコレクション 2010.10.25、2013.12.19

作家・評論家・編集者等の投票によって選ばれる早川書房の「ベストSF2010」の国内篇で、上田早夕里さんの「華竜の宮」がベスト1位に選ばれました!
「圧倒的な支持を受けて一位」とのこと。
「直球ど真ん中の力強い作品」、
「「世界沈没」とでも言うべきスケールの大きさやインサイダー的な視点の取り方からは、さまざまな第一世代作家の名前も思い浮かぶ。日本SFの正統に連なる傑作だ。」、
「上田早夕里には完全にノックアウトされた。」、
「その構成の巧みさ、テーマの大きさに圧倒された。」、
「今年は圧倒的な面白さの「華竜の宮」に尽きる。」、
「大きすぎた期待も軽々と上回った。「華竜の宮」には震えた。」、
「長らく温め推敲を重ねた歳月が窺える熟成の厚みに満ちた傑作。」、
「得られた生をどう生き抜くかを問うて前へと顔を向かせる。」、
「長年にわたり小松左京の「日本沈没」・・・・が峨々とそびえている感があったが、ついに踏破されたという印象を持った」
「今後もこの作家から目が離せそうにない。」・・・・
このような最大級の賛辞が並んでいます。
 その続編が「深紅の碑文」。

あらすじ
 25世紀。太平洋を取り巻くプレート沈み込み帯のスタグネーションスラブの一斉崩壊が始まり、白亜紀以来のホットプルームの再活性化による海底隆起で、多くの陸地が水没する。その未曾有の危機と混乱を乗り越えた人類は、再び繁栄を謳歌していた。陸上民は残された土地と海上都市で高度な情報社会を維持し、海上民は海洋域で〈魚舟〉と呼ばれる生物船を駆り生活する。

 陸の国家連合と海上社会との確執が次第に深まる中、日本政府の外交官・青澄誠司は、アジア海域での政府と海上民との対立を解消すべく、海上民の女性長(オサ)・ツキソメと会談する。両者はお互いの立場を理解し合うが、政府官僚同士の諍いや各国家連合の思惑が、障壁となってふたりの前に立ち塞がる。

 同じ頃、IERA〈国際環境研究連合〉はこの星が再度人類に与える過酷な試練の予兆を掴み、極秘計画を発案した・・・。

登場人物・組織
ネジェス
〈プロテウス〉
IERA
シャドウランズ

短編集「魚舟・獣舟」 上田早夕里

光文社文庫 2009年

 異形コレクション収録作品と書き下ろしほか一作を加えた短編集。
「魚舟・獣舟」:陸地の大半が水没した世界に適応するため,ヒトの遺伝子の98%を占めるトランスポゾンやノンコーディングRNAの領域を使って「魚舟」が創りだされる。ヒト型とともに双子として生まれた魚型は、成長すると全長30mを超える巨大な「魚舟」となり,海上民はその背中の居住殻と上甲板で暮らす。〈操舵者〉を持てなかった魚舟は,魚とワニが混じりあったような体長17m近い「獣舟」に変異し,陸の資源を食い荒らすようになる。「獣舟」にさらなる変化が・・・。
「ブルーグラス」:ダイビング・スポットとして有名なO県M岬沖の礁湖の環境が悪化し、保護区域に指定して海洋ドームが建設されることとなった。外部の物音に応じて化学反応を利用して成長するインテリア・オブジェ「ブルーグラス」。主人公はかつて自分が礁湖に沈めたブルーグラスを見にM岬を訪れる・・・。
「小鳥の墓」:「火星ダークバラード」の前日譚。

(横浜研開架)