2016年5月3日火曜日

異形コレクション 進化論 

2006/8/10, 井上雅彦編,光文社文庫
 短編なのであらすじ紹介すると即ネタバレになってしまうし,といって,フィクションの中の科学ネタや設定を紹介するのがこのMLでもあるし・・・・,ということでネタバレにはご容赦願います。
 
・「神の右手」藤崎慎吾
 地球上ではほんどのアミノ酸がL型であることを利用して,ある研究者が潜水調査船で熱水噴出域に潜航し,D型アミノ酸を使ったタンパク質合成実験を行おうとするが,謎の妨害が・・・。
・「魚舟・獣舟」上田早夕里
・「罠の前でひざまずいて」西崎 憲
 エーゲ海のある島に700人以上の研究者が集められ,そのうち進化論チームは,シーラカンスやゴキブリが何億年も形態変化しないで生き続けていることに対して,「変化というものが根本的な属性になっている生物」を創ることを試みる・・・。
・「量子感染」平谷美樹
 各地で生物が相次いで大量死する。大阪ではカブトガニ,琵琶湖ではブル-ギル,秋田県ではカエル,青森市では雀。いずれも血液中のヘモグロビンが酸素と結びつかないメトヘモグロビンに変質していることが判明。公安警察の特殊テロ捜査班が一人の研究者を現行犯逮捕するが・・・・・。
 ジャンクDNA,眠っている遺伝子を活性化する《プロモーター》,ウイルスを使ったファージ変換,EGFレセプター,リガンド/増殖因子,中間領域(メソ)量子論,量子の絡み合い(コーヒレント),フェルミ凝集体などの用語が登場する。また,先カンブリア時代のエディアカラ生物群のスパタンゴプシス, ディッキンソニア,アルムベリア,イナリア,軟体三葉虫,スプリッギナ,チャーニオディスカス,バーバンコリナが登場する。
・「娘の望み」八杉将司
 先天性小児失語症の娘が5歳で絵と音楽に天才的な才能を発揮する。やがて母親が言葉を嫌うようになり,やがて娘とその作品が有名になるにつれて,既存の言語文化が変質しはじめる・・・・・・。文化的遺伝子『ミーム』という言葉が登場。
・「うしろへむかって」井上雅彦
 哺乳類/人類の大脳皮質を発達させた原因として,夜行性という能力を獲得したこと,形態が放射状ではなく左右対称で前方に対する感覚が発達した反面,背後への恐怖があることなどを論じている。
・「バード・オブ・プレイ」多岐亡羊
 陰陽師モノ。高層ビルからの転落死が相次ぎ,その現場には鴉(からす)の群れが。
・「希望的な怪物 hopeful Monster」小中千昭
 都心の地下鉄や下水道などの地下トンネルに迷い込んだ者が「白い肌で禿頭の者」に出会ったといういくつかの都市伝説。
・「読むべからず」飛鳥部勝則
 あらすじを書くと答えになるので。
・「ランチョウの誕生」
 すみません。この作品だけはパス。金魚の品種改良になぞらえているが,それ以上書くと答えになる。
・「この島にて」朝松 健
 室町時代,土佐沖の小島。えーと妖怪・陰陽師モノというか。
・「書楼飯店」蒼柳 晋
 紙魚(しみ)という小さな虫。さまざまな文字を食むことで,その文字に込められた姿形や現象などを吸収している。紙魚料理店では生きた紙魚を料理として客に饗する。会員制であり,会員となるには女性がある通過儀礼を通らなければならない・・・・。
・「貂の女伯爵,万年城を攻略す」谷口裕貴
 人間によって知性化されたという伝説を持つ動物たちの文明世界。そこでは人間は今や奴隷の身分に過ぎない。その人間が反乱を企てようとするが・・・・・。
・「個体発生は系統発生を繰り返す」竹本健治
 あらすじ書けず。
・「ヤープ」平山夢明
 知性化された猿の話。
・「楽園の杭」野尻抱介
 テロを企てて逮捕され,遷光速駆動の恒星間探査船のヒューマンファクターとして登場させられた女性主人公。到着した地球型海洋惑星にはなんと軌道エレベータが存在した。にもかかわらず地表面には技術文明が一切存在しない。軌道エレベータのテザーの基礎部分は地表面から1000kmまで達し,年間4mで移動するマントル・プルームに絡められていた・・・・・・。
・「逆行進化」堀 晃
 衛星画像から,熱帯林のはずれに,最も原始的な緑黄体が存在することが発見された。そこは小型のクレーター跡で,地表面に海苔か苔のようなものがべったり貼りついていた。それは現生代中期の葉緑体そのものであることが判明し・・・・・。
・「おもかげレガシー」梶尾真治
 他人に近付きすぎると,その人の記憶が自分に流れ込んでくる女性。以下あらすじは掛けませんが,ホっとさせてくれる話です。

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