2015年12月16日水曜日

クリスタルサイレンス 藤崎慎吾

朝日ソノラマ 1999年

 「レフト・アローン」の続編にあたる。2071年、火星の北極冠から節足動物に似た高等生物「セーガン生物群」(三葉虫のような扁平な体、カンブリア紀の『アノマロカリス』に似ている)が発掘された。奇妙なことに、外殻だけが残され、しかも不自然に偏在していた。貝塚との類似性から、縄文時代を専門とする女性生命考古学者、アスカイ・サヤ(飛鳥井沙耶)が火星に派遣される。
 発掘と同時期に、謎の鉱物の結晶、クリスタルフラワーが火星で出現。また、地球と月の間のラグランジュ点に置かれているレーザー干渉計型重力波アンテナ、LIGASが、火星からの重力波を検出した・・・。
 サヤは25才、五感アートの制作者で火炎土器からヒントを得た「クリスタルサイレンス」が代表作。のちに「宇宙生命考古学序説」を記す。地球の海底メタンハイドレートから採掘したメタンを軌道エレベータで宇宙に搬送し、メタンガスロケットで火星に送って大気を温暖化するアイデアが登場する。火星の人口1万人。米国のマーズNY、マーズLA、日本のマーズトキオ、マーズオーサカ、タルスシティ、中国のマーズベイジン、ロシアのヘベス1、ガンドール1などのコロニーが存在。
 清涼感のあるエピローグが印象的。

2012:中国が往復1年2ヶ月の火星有人飛行。
2015:米、ロ、欧、加、日、豪など原子力惑星間宇宙船<メイフラワー2015>が火星「ローウェル」(国際マーズステーション)で3ヶ月滞在。
2016:地球でメタンハイドレートへの転換。
2020:火星条約が締結
2025:火星のテラフォーミング開始(ネゲブ砂漠産シアノバクテリアをマリネス峡谷に散布)。2035まで移民ラッシュ。
2040頃:先行する米、ロ、日、中と、後続するEU、カナダ、オーストラリア、インドとの対立が目立つようになる。
2057:マーズNYに隣接するワクチン工場爆破事件
2059か60:ワイルドウエスト社設立

=>『マッドサイエンティストの手帳』(堀晃のSF-HomePage)

横浜研開架+1冊部内留保

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