2016年4月30日土曜日

天候改造オペレーション ベン・ボーヴァ

1966年 創元推理文庫

 世界最初の深海採鉱会社「ソーントン・パシフィック・エンタープライズ社」や大陸間ロケット交通網「ソーントン・エアロスペース社」を経営するソーントン家一族。中部太平洋1万8千フィート(5486 m)の海域で採鉱ドレッジ船が嵐に直撃され、2人が行方不明となる。ボストンの気候学研究所(米気象庁の一部)の一部の研究者が従来の統計的手法ではなく乱流方程式をコンピュータで解く研究を行っていた。ソーントンと研究者は「イーアラス・リサーチ社」("イーアラス"はギリシア語で風の神様)を設立し、気象予測ビジネスに乗り出す。2週間先の地域別の正確な予報を開始、さらに天候制御の研究を進める。

 ニューイングランド地方を襲った長期旱魃の解消に成功するが、天候制御については失敗した時の責任問題からなかなか許可されない。発達前の熱帯低気圧を消す<サンダー計画>(Threatening HUrricane Neutralization DEstruction and Recording)が許可され、強大化し米本土を襲う可能性の大きいハリケーンの抹消を開始する。しかし、同時発生した4つの熱帯低気圧のうち3つの抹消には成功するが、残る一つが強大なハリケーン・オメガに発達・・・。

詳細

 初のスーパーコンピュータ<クレイ>が開発される10年前の作品であるにもかかわらず、ワシントン、ボストン、ニューヨーク各支社及びMITの「スーパーコンピュータ」を接続して一つのコンピュータとするアイデアが登場する。

 観測は、気象衛星、巨大な無人気象観測機<ドロームデアリー>(単峰ラクダの意味。6基のターボ・プロップ・エンジン、3日間の連続自動飛行が可能)、潜水艦で実施。気候制御は、静止軌道にある宇宙ステーション<アトランティック・ステーション>と6個の軍事衛星からのレーザー(十億ジュール規模)による大気加熱、<ドロームデアリー>ほか航空機からの化学薬品や降雨剤の散布による。
 なんと<CUSS-5号>が最初にモホール掘削を行った掘削船として登場する。1961年、米国の石油掘削船<CUSS-1号>が改造され、モホ面(モホロビチッチ境界面。地殻とマントルの境界)まで孔を掘る「モホール計画」が試みられた。カリフォルニア沖で実施されたが、わずか171mの柱状試料を得るだけに終わっている。
 ほか、時速400マイル(644 km/h)の圧縮空気列車、ヘリキャブ(ヘリ・タクシー)が登場。

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