2016年5月2日月曜日

クジラたちの海-2万マイルの探索 カメクジラネコ 

評論社 1995年

2006年ベスト地球・海洋SFオンライン作品・同人誌部門最優秀作品

 単なる反捕鯨作品を超えたいい作品です。ロバート・シーゲルの鯨シリーズと並ぶ傑作ではないでしょうか。
 ストーリーは、ミンククジラの母親が狂えるシャチ親衛隊にさらわれた息子を救出するため、ザトウクジラやシロナガスクジラやマッコウクジラの仲間と出会いながら南極海~グレートバリアリーフ~北米太平洋岸~日本近海へと旅をして、そこでついに対決、というものです。百本足の巨大イカも登場します。

 自然科学、海洋生態系の教科書的な内容も豊富ですが、生態系の中での人間という存在の意味を鯨の視点から鋭く考察しています。といって決して解説調ではなく読みやすく、ストーリーもよくできています。

詳細

(メモ)
 〈毛なしアザラシ(人間)〉が操る〈沈まぬ岩(捕鯨船)〉がザトウクジラ、シロナガスクジラ、ナガスクジラ、イワシクジラ、マッコウクジラを次々と屠り、その魔手はミンククジラにも及んできた。
 ミンククジラのクレアは双子のジョーイとリリを産む。父親は〈幼心を擽る者/遊戯考案者/クリエーター〉のレックス。彼らの群れは太平洋のど真ん中〈抱擁の海〉から南氷洋の〈豊饒の海〉に移る。しかしそこには殺戮を一種の新感覚のスポーツとして狂喜のうちに楽しむ狂えるシャチ親衛隊がいた。彼らに息子のジョーイがさらわれ、クレアは救出するためにシャチ親衛隊を追跡する旅に出る。
 クレアは〈沈まぬ岩〉に追い詰められるがレックスの犠牲により助かる。旅の途中でザトウクジラの〈聖歌鯨〉志願チェロキー、シロナガスクジラの〈歴史編纂者〉ダグラス、マッコウクジラのジャンセンに出会う。〈豊沃の海(太平洋北部)〉から〈クジラ食の列島〉に近付くが・・・。
 ミンククジラはヒゲクジラの仲間。彼らの群れは〈政を司る者〉モーリス、〈来し方の語り手/過去検索者〉マーゴリア、〈行く末の語り手/未来観測者〉フィーブル、〈政を輔ける者〉たちに率いられ、〈保母〉、〈伝道者〉、〈計測者〉、〈生物観察者〉などの役割がある。
 ほかにダンダラカマイルカ、ミナミトックリクジラ、〈ゴースト/岩ギンチャク〉ハイイロミズナギドリ、マダライルカとハシナガイルカ、キハダマグロの混成群、ロンガカウナ〈生協〉、シャチのバンクーバー〈ウロコ派〉の〈施政者〉ステライ、シャロン、イシイルカ、バンドウイルカなどが登場。
 〈毛なしアザラシ〉が操る〈沈まぬいわお巌(捕鯨母船)〉、〈騒音岩(物理探査船)〉、、〈落ちぬ岩(ヘリコプタ)〉、〈ゴースト(網)〉、〈脂食の巌(油タンカー)〉、〈ツキンボ〉、〈死の精霊〉、〈疫の精霊〉、〈帆立巌〉、〈ハタラキ岩〉などが登場。

=>捕鯨論説(カメクジラネコさん)

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