2015年12月1日火曜日

乱気流 ジャイルズ・フォーデン

新潮文庫, 2010.11

上:http://www.amazon.co.jp/dp/4102177612/
下:http://www.amazon.co.jp/dp/4102177620/
 原題はTurbulenceで、「乱流」の方が合っているかもしれません。
 悪天候の合間をぬって決行されたノルマンディー上陸作戦(1944年)における天気予報に挑戦する人々を描いた作品で、主人公は架空の若い気象研究者。
 当時、2日を越えた天気予報ができなかった時代。数値気象予報を予言し、フラクタルの先駆的研究者でもあったルイス・フライ・リチャードソン(1881-1953)をモデルにした架空の天才学者ライマンが、この2日を越える予測の重要な鍵となっている。
 というとプロジェクトX的なノンフィクションかと思ったら、そうではない。アフリカで両親を土石流で亡くした過去を持つ内向的な主人公が気象庁長官から特命任務を命ぜられる。良心的兵役拒否者であるライマンが考案したライマン数(成層圏の中での乱流の発達や減衰を示す。現実には「リチャードソン数」と呼ばれている)の秘密をスパイし、ノルマンディー上陸作戦時の気象予測を改善するという任務。
 この主人公のメドウズ、上司の秘書やライマンの奥さんや婦人補助部隊員に心ときめかせたり、泥酔して失敗を重ねた、ドイツ軍偵察機をラジオゾンデで撃墜しようとしたりもする。ライマンも本物のリチャードソンとはまったく異なり、まずまず波乱万丈のストーリーである。
 一方、乱流についてもさまざまに描写され、さまざまな手法を用いる予報官たちのまちまちの予測を責任者が苦労してまとめる人間アンサンブル予測が面白い。
アシカを機雷探知させる研究や氷山船を研究していたジェフリー・パイクという実在の人物も登場する虚実の入り混じった作品。

(横浜研開架)

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