2015年12月5日土曜日

深海からの生還 ロジャー・チャップマン

原著1975, 関邦博・堀真之訳、井上書房 1989

1973年、英国ヴィッカーズ・オーシャニクス社の潜水作業艇「パイセスIII号」が、南アイルランドの沖合いでの海底ケーブルの埋設作業を終えて浮上した直後、曳航ロープが絡んで後部耐圧殻のハッチが外れるという信じられないトラブルで、水深480メートルの海底に沈没。

8月29日1:19に潜航開始してから4日目の9月1日13:17に引き揚げられてハッチが開かれるまで、約48時間、生存可能時間が切れる直前に救助されるまでのエピソード。

「しんかい2000」が研究潜航を開始した1984年頃、パイセスIII号を救助した米海軍の無人機カーブIIIに、「しんかい2000」が浮上不能となった場合にも救助してもらうため、JAMSTECと科技庁でひととおりの準備が済んでいました。

ところがこのカーブIIIの空輸~船積み輸送の所要時間を積み上げると、ひとつトラブルが生じたらアウトという、ぎりぎりのタイミングでしか救助できないことから、その後ドルフィン3Kを開発して「なつしま」に同時搭載することとなりました。

その頃はまだこの原著が出版されていたことは知らず、25年目にしてこの有名な救出劇の詳細を読むことができました。

最終的にはカーブIIIに救助されたのですが、その前に北海で稼働中のパイセスII号が現場に急行し、またカナダのHYCO社が所有するパイセスV号がカナダのハリファックスから空輸され、そしてカーブIIIがサンディエゴから空輸されています。

最初にパイセスII号が現場に向かうが索の取り付けに失敗したうえマニピュレータが損傷。パイセスV号は沈没艇体の発見にかなり苦労し、やはり索の取り付けに失敗。再挑戦するパイセスII号は着水直後に浸水警報で揚収して修理。そして修理後のパイセスII号が一本目の索の取り付けに成功し、次にカーブIIIが2本目の索の取り付けに成功。

その間、支援ボートの船外機の故障、荒天、トロール漁船による救助活動の妨害!まであり。
二酸化炭素を吸着する水酸化リチウムが湿気で固化して吸着能力が落ちること、洋上との連絡や二酸化炭素の吸着と酸素の放出のために乗員が定期的に起きなければならないこと、密閉された耐圧殻内での尿と大便の処理の苦労も書かれています。

(横浜研・GODAC開架)

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