2016年1月2日土曜日

屍海峡 西村寿行

1974サンケイ出版、1976角川文庫

 小説家としてのデビュー作『瀬戸内殺人海流』は読み逃してるので、海洋としての瀬戸内海がどれだけ深く扱われているかはわかりませんが、『屍海峡』は、ミステリーとしても本格であると同時に、本格派の海洋「学」テーマの小説でもあります。
 ミステリーとしてのトリックとゆうか仕掛けのキモは二つ。
 一つは医療技術がからんだもの。

 そして、もう一つは、海産生命、この場合はタコの大量死の原因となった、ある現象。水産ならびに海洋生物学では常識の現象で、しかも、場所は、工業化による汚染がすすんだ瀬戸内海となれば専門家にはいわでもがなのことなのですが、あえて、ここでその現象の名をはっきりとは書かないのは、トリックそのものではなく、犯罪の立証にからむ証拠の発見に、この現象が深くからんでいるため。

 その、余りにも凄絶で美しい光景の印象から、ぼくはいつも、タイトルを、西村屋さんが紹介してる『蒼き海の伝説』と混同してしまいます・・・・・・って、あっ、ネタばらしもいいとこでありました。
 ウェブでチェックしてみたら、ミステリー好きの方が詳しいストーリーを紹介されてましたが、お気の毒に、専門知識がないため、上記二つの仕掛け、本当に成立するのだろうかと首をかしげてました。
 阿笠湖南さあん、ぜえんぶホントのことですからね。(by 永瀬唯さん)
=>書評(阿笠湖南さん)

 東京の安アパートで安高恭二36才が青酸で殺された。唯一ボトルに残された指紋から容疑者として秋宗修が逮捕された。安高の顔にはケロイドの跡があり、殺される前に頭痛と船酔い症状と視力障害、そしてある男を恐れる拘禁様症状に見舞われていた。そして秋宗には安高に鯔漁妨害と養殖ダコを全滅させられた恨みを持つと見られ、精神異常と診断された。

 解決したと思われた殺人事件だが、安高が殺されたアパートの無人の隣室には干からびた数匹のゴキブリの幼虫が。そして秋宗は公害省公害第4課の調査官(環境Gメン)松前真五の元を訪れ、「青い水」の分析を依頼しようとして姿を消していた。捜査本部の中岡知機刑事は精神異常の秋宗がボトルの指紋を除き全て拭き取っていたことに疑問を持ち、瀬戸内海の島に向かう・・・。

(横浜研開架)

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