2016年4月30日土曜日

万物理論 グレッグ・イーガン

2004 創元SF文庫

 2055年の世界。2020年代末に標準統一理論SUFTが完成している。2036年に工学産藻類と日光で炭化水素を採掘の1/10 のコストで造れるようになっている。樹木も潅木も耐渇水性、耐火性で少量の発電を行っている。農産物のほとんどがバイオ企業の特許で占められ、死後復活さえ可能となっている。人間の性は男性、女性、転男性、転女性、汎性、強化男性、強化女性、微化男性、微化女性に分化している。

 SUFTに先立つもっと単純な理論、万物理論TOEについて、ヴァイオレット・モサラ27才、ヘンリー・バッゾ83才、ヤスオ・ニシデ

 人工の島<ステートレス>は南太平洋の中央、南緯32度の公海上、無名の平頭海山に固着していた。温室効果難民をどの国よりも大量に受け入れていたにもかかわらず、オーストラリア、日本、中国、韓国などと対立している。青白い6本足のヒトデのような形。百万人が住んでいる。フィジーとサモアでも膨大な特許料などを払って自前の島を育て始めている。

 2025年、カリフォルニアのバイテク企業《エンジニュイティ》の社員6人が失踪。2032年に播種され、成長して居住可能となるまで10年近くかかる。親石性バクテリアが水と二酸化炭素を吸収して、炭水化物と酸素を作る。このバクテリアはデオキシリボースのような"脱酸素"炭水化物を作り出し、吸収した二酸化炭素よりも多くの酸素を放出するので、差し引き浮力を増加させる。島の下面は絶え間なく侵食されているが、工学的珪藻類がその修復装置となっている。

 主人公アンドルー・ワースは科学ジャーナリスト、恋人ジーナは風力発電研究所で2百メガワット発電《ビッグ・ハロルド》の研究をしている。

《文化第一主義》、《神秘主義復興運動》:ウェラー、《わきまえろ科学!》:ジャネット・ウォルシュという3大カルト、《人間宇宙論者》(Anthrocosmologist、通称AC)、《エデン主義》(地球/ガイアの与えてくれた"自然のままの"ユートピアが存在し、われわれはみなそこへ還るべきと主張)、《分子生物学者に社会的責任を果たさせる会》MBSR、《汎アフリカ文化防衛戦線》PADF、"テクノ解放主義"(テクノリベラシオン)

《シーネット》社(Sceince Education Entertainment Network)、《テクノラリア》(TL)、《プラネット・ニュース》(通称プラネット・ノイズ)、《アトランティカ》(大学生パートが作っているハイカルチャー・ネットジン)、《プロテウス・インフォメーション》、《緑の知恵(グリン・ヴァイスハイト)》(《神秘主義復興運動》)、《デルフォイ・バイオシステム》社

「自分と周囲のあらゆる人に作用しているその生物学的な力を理解している人々は、少なくとも、望むものを最小限の闘争で手に入れるために知的戦略を用いることが可能だから・・・・・過去の政治哲学者のだれかが唱えていた単なる理想主義的神話や願望的思考に足をとられたりせずに」/「情報の行きわたった無政府状態」

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