2016年5月2日月曜日

イルカ放送 レオ・シラード

1963年 みすず書房

 冷戦下、仮想敵国同士の科学者たちが「海洋生物を研究する」というあたりさわりのないテーマを口実に、各国協力で研究所を設立させる。

 そこで、ある日「イルカとの対話が実現した」と発表し、政治や経済に関する「イルカの提案」を発表し始める。これをイルカ放送と称する。また「イルカの提案に基づき」資金を巧妙に運用し、莫大な利益を生む。

 それを原資としてさまざまな事業や国際組織を運営し、たとえば、ある国のタカ派の要人を高給で引き抜き、閑職に据えたりする。これらの活動を経て、世界の経済は安定し、戦争の危機が生じるたびにそれを回避し、冷戦は収束してゆく。

 そんなある日「イルカ放送」は突然大火事で焼失し、研究資料もいっさい失われてしまった。
という、シラードが常々提唱していた「科学者の方法で政治を行う」とこうなる、という近未来SFです。当時の時代背景からすると、けっこう面白く読みました。 (by Y.Fuyunoさん)

0 件のコメント:

コメントを投稿