この作品を紹介するのは難しい。これまでのどんなSFとも異なる。帯に書かれている「日本沈没」の現代版と期待して読むことはお奨めしない。予断を持たずに上下2巻を読んで欲しい作品である。
といって何も書かないわけにはいかない。与那国島沖で発見された海底遺跡らしきものについて、誰がどうやって造ったか、そしてなぜそれが現在、海中にあるのかという疑問から出発し、与那国島に伝わる悲しい楽園伝説にも触発されて書かれた作品のようである。
科学技術面については、7月末に完成したばかりの地球深部探査船「ちきゅう」の後継船となる深海掘削船が登場するが、その緊急オペレーションについて一般にはほとんど知られていない取材結果がたっぷり盛り込まれている。地球内部のさまざまな現象についても研究現場でリアルタイムに議論されている問題にまで踏み込んでいる。マントルから炭素が超高速で上昇してダイアモンドとなるキンバーライトの噴出現象を描いたのは本書が初めてであろう。
単なる受け売りに留まらず、地殻~マントル内微生物などは最新の科学的知見より先に進んだ仮説を展開しているし、登場する1万m級有人潜水船も、海洋技術者のアイデアをふんだんに取り入れてなお一歩先を行ってる。
このように、本書ではあまり知られていない地球・生命科学という分野の科学技術の夢とスペクタルにたっぷり触れることができるのは間違いない。
もうひとつの側面は、筆者が「蛍女」や「ストーンエイジCOP/KIDS」で扱ってきたテーマにも通じるが、今の科学では説明できない能力を持つ少女と、その能力を「共感覚」を糸口として科学的に説明しようとする科学者たちを交えつつ、大胆に空想の世界を展開させている。
そして筆者のすべての作品に通ずるが、自然描写の細やかさと色彩感覚の豊かさは本作品でも十二分に味わうことができる。
肝心のストーリーについてはやはり読んでください。藤崎作品に登場するヒロインはやはりいいですね!
(登場メカ)
・潜水調査船<しんかいFD>:FDは"Full Depth"の意味。全長8.6m、CNTP船体、セラミックス球シンタクティックフォーム、2つの耐圧球で1泊2日潜航、倒立潜航が可能、燃料電池とリチウムイオン電池、研究者2人+操縦者2人、マルチナロービーム/サイドスキャン/サブボトムプロファイラ、音響水中映像、観測窓の直径25cm、iコパイ、平べったい形状で水中グライディング可能。バリヤブル・バラスティング・システム、非常用ショットバラスト、レーザーレンジファインダ、4台の<小亀>を搭載。その支援母船<するが>(約8000トン)
・深海巡航探査機<りゅうぐう>、無人探査機<かいえん>、その支援母船<さがみ>(約3000トン)
・深海掘削船<いざなみ>:30年前に建造された<ちきゅう>の後継船。全長250m、幅42m、総トン数6万3000トン、デリックの高さ120m、水深6000mで海底下1万5000m掘削可能。無人探査機<シール1、2>搭載、マントルまで16kmを3週間で掘れる。最大150人、潜水船を搭載可能。超高圧高温培養システム『ミニマントル』(4000気圧、350度C)を搭載。
・米1万m有人潜水船<フォナーリ>、<しんかい6500>と<よこすか>、<ハイパードルフィン>、中国原子力?深海調査船<先駆者>が登場。
(琉球語)
サバニ:琉球地方特有の形状をした漁師のくり舟
ムヌチ:物知り、市井の巫女的存在。ユタ。カンダーリ:神憑かり、スータガマリ:霊高生まれ
ウンガン:拝所/御獄
ハイドィナン:南与那国島、伝説の楽土、パイパティローマ:南波照間島、ニライカナイ:神々の世界
ダマヒルミ:八重山、ダティグチディ:屋手久頂上(与那国島の東部にある史跡のひとつ)、ティンダハナタ:与那国島の中部北側にある場所の地名
トゥラヌハカディ:北東の風
ニーバイ:屋敷神
キディムヌ:木霊、ンニムヌ:悪霊、マディムヌ:魔物
ダヌカン:火の神
ムドゥルヌチ:深海の神様
オナリ神:姉又は妹神(琉球語)/ブナイガン:姉妹神(与那国の呼び名)
オペレーション・ヒヌカン(火の神、ここでは神様ネットに接続してくれるプロバイダーみたいなものの意味)
フチヌマブイクミ:星に魂を戻す儀式、マブイクミ/マブヤクミ:魂を戻す儀式
ウガンフトウテイ:豊年祭、アマグイ:雨乞い
ビディリ:霊石
イチタライ:石の容器
ディンウヤシ:沖縄で神事の際に、紙銭や半紙などを燃やして泡盛をかけ、神様にお金や反物を贈る儀式
トウニ:邑根
カァブ:司、イチカ:石司
アミナグ:揺りかご
ドゥグティ:門口、マイソガティ:障壁
ワヌダー:ブタ小屋
シダディ:与那国の伝統的な織物。ブナイティサージ(姉妹手拭い)とも呼ばれる。
(略語)
JESTA:地球科学技術局(Japan Earth Science and Technology Agency)。
OREI:沖縄資源探査研究所
HMS:隠れマッドサイエンティスツ
ISEIC:Inter-Sphere Embedded Information Cloud, 圏間基層情報雲理論。<森知性>論の発展形。
OGUBA:酸素発生型呼吸装置、通称エアジェン
PQC:ポータブル量子コンピュータ、<ストーンリーダー>、お化けノートパソコン
ESJ:環境保護団体アースシップ・ジャパン
fMRI:機能的磁気共鳴画像
MEG:脳磁図
PET:陽電子断層撮影
PETS:圧電電子伝達系
CNTRP:カーボンナノチューブ強化プラスチック
RETTDASS:リアルタイム三次元音波探査システム(Real-Time Three-Dimensional Acoustic Survay System)
LCAC:エアクッション型揚収艇
PTCS:圧力温度保持コアサンプラー
(登場する生物)
海中:ストロベリーサンゴ、エダミドリイシ(造礁サンゴ)、アワサンゴ、アオサンゴ、ハマサンゴ、キクメイシ(塊状)、ミドリイシ(枝状)、ウスコモンサンゴ、リュウキュウキッカサンゴ、サンゴイソギンチャク、イボヤギ、イソバナ、カイメン、ウミユリ、リュウキュウスガモ(海草)
ツノダシ(熱帯魚みたい)、ヘラルドコガネヤッコ、ブダイ(黒い)、ソラスズメダイ、タカノハダイ、カゴカキダイ、ノコギリダイ、クロモンツキ(ニザイダイの仲間)、デバスズメダイ、タテジマキンチャクダイ(愛称タテキン、熱帯魚エンゼルフィッシュの一種)、スズメダイ、クマノミ、ハマクマノミ、チョウチョウウオ、ツバメタナバタウオ、キヘリモンガラ、ムラサメモンガラ、クログチニザ、モンガラカワハギ、メガネクロハギ、オニボラ、サザナミヤッコ、ダツ(細長い魚)、オニカマス(バラクーダ)、ハギ
ウツボ、ギンザメ、アカシュモクザメ、ツノザメ、アオリイカ、ナマコ、オオイカリナマコ、ウミウシ、キイロウミウシ、テッポウエビ、コシオリエビ、ショウジンガニ、アオウミガメ
貝類:クボガイ、バテイラ(シッタカ)、カンザシゴカイ、ナギナタシロウリガイ、シンカイヒバリガイ、ゴカイ、シャコガイ
陸上植物:オオタニワタリ、フクギ、アカバナ(真紅の花)、ユウナ(黄色い花)、シークワシャー(柑橘類)、ポインセチア、芭蕉の木、クロトン、ススキ、ガジュマル、アコウ、スゲ、アダン、ヤラブ(テリハボク)、クサトベラ、センダングサ、タビラコ、スゲ、ハマヒサカキ、クバ、パパイヤ、ウラジロガシ、スダジイ、ビロウ樹、ンバ(カニクサ)、クロキ、ギンネム、タブノキ
その他:マダラサソリ、ユカタンビワハゴロモ(昆虫)、ヨナグニサン/アヤミハビル(蛾)、コオロギ、スズムシ、キリギリス
(横浜研開架)
といって何も書かないわけにはいかない。与那国島沖で発見された海底遺跡らしきものについて、誰がどうやって造ったか、そしてなぜそれが現在、海中にあるのかという疑問から出発し、与那国島に伝わる悲しい楽園伝説にも触発されて書かれた作品のようである。
科学技術面については、7月末に完成したばかりの地球深部探査船「ちきゅう」の後継船となる深海掘削船が登場するが、その緊急オペレーションについて一般にはほとんど知られていない取材結果がたっぷり盛り込まれている。地球内部のさまざまな現象についても研究現場でリアルタイムに議論されている問題にまで踏み込んでいる。マントルから炭素が超高速で上昇してダイアモンドとなるキンバーライトの噴出現象を描いたのは本書が初めてであろう。
単なる受け売りに留まらず、地殻~マントル内微生物などは最新の科学的知見より先に進んだ仮説を展開しているし、登場する1万m級有人潜水船も、海洋技術者のアイデアをふんだんに取り入れてなお一歩先を行ってる。
このように、本書ではあまり知られていない地球・生命科学という分野の科学技術の夢とスペクタルにたっぷり触れることができるのは間違いない。
もうひとつの側面は、筆者が「蛍女」や「ストーンエイジCOP/KIDS」で扱ってきたテーマにも通じるが、今の科学では説明できない能力を持つ少女と、その能力を「共感覚」を糸口として科学的に説明しようとする科学者たちを交えつつ、大胆に空想の世界を展開させている。
そして筆者のすべての作品に通ずるが、自然描写の細やかさと色彩感覚の豊かさは本作品でも十二分に味わうことができる。
肝心のストーリーについてはやはり読んでください。藤崎作品に登場するヒロインはやはりいいですね!
(登場メカ)
・潜水調査船<しんかいFD>:FDは"Full Depth"の意味。全長8.6m、CNTP船体、セラミックス球シンタクティックフォーム、2つの耐圧球で1泊2日潜航、倒立潜航が可能、燃料電池とリチウムイオン電池、研究者2人+操縦者2人、マルチナロービーム/サイドスキャン/サブボトムプロファイラ、音響水中映像、観測窓の直径25cm、iコパイ、平べったい形状で水中グライディング可能。バリヤブル・バラスティング・システム、非常用ショットバラスト、レーザーレンジファインダ、4台の<小亀>を搭載。その支援母船<するが>(約8000トン)
・深海巡航探査機<りゅうぐう>、無人探査機<かいえん>、その支援母船<さがみ>(約3000トン)
・深海掘削船<いざなみ>:30年前に建造された<ちきゅう>の後継船。全長250m、幅42m、総トン数6万3000トン、デリックの高さ120m、水深6000mで海底下1万5000m掘削可能。無人探査機<シール1、2>搭載、マントルまで16kmを3週間で掘れる。最大150人、潜水船を搭載可能。超高圧高温培養システム『ミニマントル』(4000気圧、350度C)を搭載。
・米1万m有人潜水船<フォナーリ>、<しんかい6500>と<よこすか>、<ハイパードルフィン>、中国原子力?深海調査船<先駆者>が登場。
(琉球語)
サバニ:琉球地方特有の形状をした漁師のくり舟
ムヌチ:物知り、市井の巫女的存在。ユタ。カンダーリ:神憑かり、スータガマリ:霊高生まれ
ウンガン:拝所/御獄
ハイドィナン:南与那国島、伝説の楽土、パイパティローマ:南波照間島、ニライカナイ:神々の世界
ダマヒルミ:八重山、ダティグチディ:屋手久頂上(与那国島の東部にある史跡のひとつ)、ティンダハナタ:与那国島の中部北側にある場所の地名
トゥラヌハカディ:北東の風
ニーバイ:屋敷神
キディムヌ:木霊、ンニムヌ:悪霊、マディムヌ:魔物
ダヌカン:火の神
ムドゥルヌチ:深海の神様
オナリ神:姉又は妹神(琉球語)/ブナイガン:姉妹神(与那国の呼び名)
オペレーション・ヒヌカン(火の神、ここでは神様ネットに接続してくれるプロバイダーみたいなものの意味)
フチヌマブイクミ:星に魂を戻す儀式、マブイクミ/マブヤクミ:魂を戻す儀式
ウガンフトウテイ:豊年祭、アマグイ:雨乞い
ビディリ:霊石
イチタライ:石の容器
ディンウヤシ:沖縄で神事の際に、紙銭や半紙などを燃やして泡盛をかけ、神様にお金や反物を贈る儀式
トウニ:邑根
カァブ:司、イチカ:石司
アミナグ:揺りかご
ドゥグティ:門口、マイソガティ:障壁
ワヌダー:ブタ小屋
シダディ:与那国の伝統的な織物。ブナイティサージ(姉妹手拭い)とも呼ばれる。
(略語)
JESTA:地球科学技術局(Japan Earth Science and Technology Agency)。
OREI:沖縄資源探査研究所
HMS:隠れマッドサイエンティスツ
ISEIC:Inter-Sphere Embedded Information Cloud, 圏間基層情報雲理論。<森知性>論の発展形。
OGUBA:酸素発生型呼吸装置、通称エアジェン
PQC:ポータブル量子コンピュータ、<ストーンリーダー>、お化けノートパソコン
ESJ:環境保護団体アースシップ・ジャパン
fMRI:機能的磁気共鳴画像
MEG:脳磁図
PET:陽電子断層撮影
PETS:圧電電子伝達系
CNTRP:カーボンナノチューブ強化プラスチック
RETTDASS:リアルタイム三次元音波探査システム(Real-Time Three-Dimensional Acoustic Survay System)
LCAC:エアクッション型揚収艇
PTCS:圧力温度保持コアサンプラー
(登場する生物)
海中:ストロベリーサンゴ、エダミドリイシ(造礁サンゴ)、アワサンゴ、アオサンゴ、ハマサンゴ、キクメイシ(塊状)、ミドリイシ(枝状)、ウスコモンサンゴ、リュウキュウキッカサンゴ、サンゴイソギンチャク、イボヤギ、イソバナ、カイメン、ウミユリ、リュウキュウスガモ(海草)
ツノダシ(熱帯魚みたい)、ヘラルドコガネヤッコ、ブダイ(黒い)、ソラスズメダイ、タカノハダイ、カゴカキダイ、ノコギリダイ、クロモンツキ(ニザイダイの仲間)、デバスズメダイ、タテジマキンチャクダイ(愛称タテキン、熱帯魚エンゼルフィッシュの一種)、スズメダイ、クマノミ、ハマクマノミ、チョウチョウウオ、ツバメタナバタウオ、キヘリモンガラ、ムラサメモンガラ、クログチニザ、モンガラカワハギ、メガネクロハギ、オニボラ、サザナミヤッコ、ダツ(細長い魚)、オニカマス(バラクーダ)、ハギ
ウツボ、ギンザメ、アカシュモクザメ、ツノザメ、アオリイカ、ナマコ、オオイカリナマコ、ウミウシ、キイロウミウシ、テッポウエビ、コシオリエビ、ショウジンガニ、アオウミガメ
貝類:クボガイ、バテイラ(シッタカ)、カンザシゴカイ、ナギナタシロウリガイ、シンカイヒバリガイ、ゴカイ、シャコガイ
陸上植物:オオタニワタリ、フクギ、アカバナ(真紅の花)、ユウナ(黄色い花)、シークワシャー(柑橘類)、ポインセチア、芭蕉の木、クロトン、ススキ、ガジュマル、アコウ、スゲ、アダン、ヤラブ(テリハボク)、クサトベラ、センダングサ、タビラコ、スゲ、ハマヒサカキ、クバ、パパイヤ、ウラジロガシ、スダジイ、ビロウ樹、ンバ(カニクサ)、クロキ、ギンネム、タブノキ
その他:マダラサソリ、ユカタンビワハゴロモ(昆虫)、ヨナグニサン/アヤミハビル(蛾)、コオロギ、スズムシ、キリギリス
(横浜研開架)
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