2016年1月2日土曜日

原子力空母を阻止せよ 大石英司

1987中央公論社/1992徳間文庫
 
 米原子力空母<カール・ヴィンソン>にソ連ヴィクターIII級攻撃型原潜<V.K.ブリュッヘル>が衝突。原潜は沈没。空母はメルトダウンの恐れがあるにもかかわらず横須賀ドックへと進路を取る。自衛隊の最新鋭潜水艦<わかつき>は<カール・ヴィンソン>阻止に向かう・・・。政治将校以外はすべてイスラム人と少数民族出身者という異色のアクラ級<A.M.ワシレフスキー>と潜水艦捜索艦T-AGOS<イドミタブル>、ロサンジェルス級<ホノルル>、<わかつき>との対決がいずれも秀逸!

詳細
○<わかつき>
「ゆうしお」型最新鋭潜水艦で、艦長若月の名をとったニックネーム。乗組員75人、全長76m、公称2250トン(実は2300トン)、シュラウドリング付きスクリュー、無反響タイル、完全な消磁、摩擦抵抗軽減のためのポリマー装置、艦首にZQQ4ハイドロホーン・アレイ、船側にコンフォーマル・ソナー、曳航式のTACTASソーナー、スイムアウト方式のG-RX3魚雷(70ノット、リチウムと六フッ化硫黄の反応熱を利用したクローズド・サイクル・エンジン)、可潜深度800m、蓄電性能30ノットで3時間。ポリマー放出で40ノット。ヒドラジン・ガス発生による緊急ブローが可能。
艦長がこれまで乗船してきた潜水艦を「ドンガメ」と呼んでいるところが「サブマリン707」の影響を思わせる。

○<A.M.ワシレフスキー>
ライバル役、別名「イスラム(ムスリム)艦」又は「木片(チュルカ)艦」、8000トン、全長107m、船体がチタン製の設定。3人乗り潜航艇<ソーバリ(黒テン)>(全長6m、幅2m)、650ミリSSN-16対潜ミサイル魚雷、533ミリ有線誘導魚雷、タイプ64航走(ウェーキ)魚雷を搭載。

コンバージェンス・ゾーン(CZ)、サウンド・チャンネル(SC)、層深(音速最大となる水深)、表面層ダクト、シャドーゾーン、バッフルズ・ゾーン、海底反射(BB)などの音響用語、巨大固定ソーナー網である海遊音響探査網(SOSUS)「コロッサス・ネットワーク」、深海用アルテミス、SURTASS曳航式ソナー(T-AGOS艦より水深400mを曳航。ハイドロホーン長さ5000m)、戦術曳航並列ソナー・システムTACTASS(水深300mを曳航。ハイドロフォンの長さ数十m)、水中固定ソノブイLQT4、曳航式ファンフェア対魚雷デコイ、P-3CのDICASSアクティブソーナーなどの音響機器が続出。
親潮と黒潮の潮目、冷水塊、フィリピン海プレート、海山、海台などの海洋学用語も登場。「華厳の滝」(神津島の真西辺り)、「ビクトリア・ホールズ」(野島崎沖300km)、「レッドウッドの森」、「グランド・キャニオン」など海中の地点の呼び名が面白い。
このほか、国産初の地球観測衛星「もも1号」(MOS-1)、ラファイエット級<ヘンリー・L・スチムソン>、ロサンジェルス級<オリンピア>などが登場。

登場人物
○<カール・ヴィンソン>
艦長:アルバート・アロー大佐、副長:トーマス・カルビン中佐、操舵員?:ドワイト・チャーチ中尉、報道員:エド、空母戦闘群司令官:エドワード・ベイブリッジ准将、機関長:エンリコ・バローン中佐、損害復旧担当士官:グスタフ・キャッセル少佐、飛行長:フレデリック・ベンディクソン中佐、海軍神父:トーマス・ブライアン中尉

○<わかつき>
艦長:若月千尋三佐45才、副長:麻生貢二佐36才、船務長:三上康介三佐33才、水雷長:相生進34才、電子整備員:北村清三郎二曹、補給科衛生科員:高山優三曹、水測長:鈴木定義曹長33才、水測員?:国嶋悌二三尉、機関長:中山孝夫三佐

○<V・K・ブリュッヘル>
艦長:セルゲイ・ベテフテン中佐、水測長:ワシリー・トレチェク中尉、政治将校:ビクトル・ベリコフ少佐

○<A.M.ワシレフスキー>
艦長:ムスタファ・ブハーリー中佐、副長:ヴォニヤミン・エレンベルグ中佐、政治将校:ユーリー・ポポフ少佐32才、水雷長:ヒロノブ・ハン中尉

○<インドミタブル>
艦長:カール・エクソン中佐、紅海長:マーク・ホーガン操舵員22才、機関長:アンドリュー・スカーフ、ソナー・システム首席監督:ステファン・ヤコブ中尉

○<ホノルル>
艦長:ジョージ・ディクソン中佐35才、副長:ハワード・ドーマー中佐、水測長?:ソーンダイク軍曹

(部内留保)

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