2016年1月1日金曜日

往きてまた還らず 田中光二

1999徳間文庫、上下巻 1977年

 タイトルのもとになった始皇帝暗殺(未遂)者、荊軻(けいか)の男の美学(「壮士往きてまた帰らず」)なんぞぶっとぶ残酷無類の連続テロ。

 概算でもたぶん一万人にはとどく犠牲者をだしたあとの最終目的は、ええと、物語の時代、新島だかに設置された巨大な石油備蓄基地を、米軍から奪った核地雷で爆破。放射能まみれの(おまけに燃えてる)原油で黒潮を汚染、東北沖からアメリカ大陸北西部への潮流経由で、さらに南へ、そして西へと太平洋をぐるっとめぐって汚染を広げ、環太平洋地域諸国を壊滅させようというもので、……あれれ、この究極テロに僧都が使うのは、ううみゅ、記憶だとフランス製と書いてあったような潜水艇でしたね。

 なんだ、これも海洋バイオレンスというかサスペンスというか、もうここまでゆくと完全な海洋テーマSFでした。(by 永瀬唯さん)

 8月2日、新宿でガソリンスタンドとタンクローリーが爆破。西口一帯が火の海となり死者813人。8月16日、上野駅でタンク車が爆破。駅周辺が火の海となり、2705人もの死者が。9月29日、東名高速でムハシ・インドネシア石油相が高級コール・ガールと爆死。そのスキャンダルでマラッカ海峡の航行禁止が通告される。10月12日、横須賀米海軍基地で弾薬輸送中に核地雷が盗み出される。次の狙いは世界最大の原油備蓄基地、約5000万キロリットルもの原油備蓄されている八丈小島か・・・。

 ネタバレになるが、仏製潜水円盤<S.P.3000>は3000m潜航可能、3人乗り。シアナ(2人乗り)をモデルにしているような。仕様問い合わせ先として海洋科学技術センターが登場する。

0 件のコメント:

コメントを投稿