2016年5月3日火曜日

生存の図式 ジェイムズ・ホワイト

訳:伊藤典夫/カバー:鶴田一郎/発行:1983年2月28日

沈没船SFであり世代交代宇宙船SFでもある。
 1942年第二次世界大戦の最中、多くの物資を積んだ改装タンカー〈ガルブ・トレイダー〉がUボートに撃沈された。だが、船体は完全に沈没したわけではなかった。船は水面下数十メートルのところを沈むとも浮くともつかぬ状態のまま海流にのって漂いはじめた。しかも、船底には五人の男女が生きていた! 

幸い、あり余る酸素と食料がある。さし迫った危険がないことが分かると、彼らは生きるための工夫をはじめた――完全に密閉されたいくつものタンク内で、ペダル漕ぎの発電機、炭酸ガスと汚物の吸収を兼ねた豆の菜園、浮力を増やすためのサセチレンガス注入装置、蒸留装置、記憶の発掘ゲームなど……、これから何世代も生きつづけることになろうとは夢にも思わずに……。

 一方、太陽系から数十光年離れた空間を亜光速で飛んでいく大宇宙船団があった。乗員は水棲人。彼らは死滅した母星をあとに新たなる生息地――地球をめざしていた。だが、彼らにはひとつ頭の痛い問題があった。地球に着くまでに繰り返す、長期の冷凍睡眠は、覚醒後彼らを廃人同然にいたらしめるというのだ。しかたなく彼らは、巨大な船内_自らの間に子孫を残し、やがては何世代か後の子孫が地球へ到着することに希望をたくすが……。

 練りに練ったアイデアと、いかにも英国作家らしい重厚な筆致で、海洋冒険小説の醍醐味と〈世代宇宙船〉テーマを見事に融合した傑作長篇!
http://kdai-toshokan.web.infoseek.co.jp/whitej.html

防油区画/コファダム(浸水)
1号タンク(汚物が溜まっている)
2号タンク(臨時の便所)
3号タンク(臨時の便所、居住区画、菜園)
4号タンク(両側に貯蔵スペース)
5号ウィングタンク(中央部)
6号タンク(作業台と棚)
7号タンク(両側にバラストタンク。食料を貯蔵)
9号タンク
10号タンク(別の病室)
11号タンク(特別病室)
12号左舷ウィングタンク(艦長の椅子)
船尾楼甲板下の区画(のちに排水に成功する。リチャードの部屋。舷窓あり)
後部ポンプ室(浸水)
後部コッファダム
機関室:魚雷が命中

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